エネルギー管理士試験の「熱分野」における各課目に対する考察となります。各課目の出題内容・傾向や取り組み方等について紹介します。
熱分野については管理人は専門外で分からないのですが、課目Ⅰを除き「熱管理士」に合格されたQPさんより頂いた情報を掲載しています。情報を頂きありがとうございます。
【お願い】
熱分野の考察やアドバイスがあればコメント等いただけると大変助かります。
課目Ⅰ エネルギー総合管理及び法規
法令およびエネルギーに関する計算問題が出題されます。電気分野と共通課目で同じ内容の問題が出題されます。単位換算が理解できていると計算問題が対応しやすいです。もう少し詳しくは以下へ書いています。
課目Ⅱ 熱と流体の流れの基礎
4課目の中では、最も難しいと思います。
この課目が、一番計算問題があります。1年目も2年目も難しいと思いあまり勉強しませんでした。1年目30%台 、2年目40%台、3年目後が無いので、サブノートを作ってまじめに勉強しま した。60%後半に行きました。理解してしまうと、確実に点数が取れます。
中身は、熱力学の基礎2題、流体工学の基礎1題、伝熱工学の基礎1題で す。熱力学の基礎が2題あるので、こちらに力を入れました。
「熱力学の基礎」は、理想気体、蒸気プラントと理論サイクル、Ts線図(温度 とエントロピー)、Pv線図(圧力と体積)が穴うめ、計算ともに出ます。電気 管理士の勉強をした方はとっつきにくいと思います。工場経験者は、理論サイクルについては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービン、蒸気プラント(ボイラ+蒸気タービン)、冷凍サイクル、ヒートポンプサイクル(冷凍 とヒートポンプは逆のものです。エアコンを考えればいい)と考えるわかりやすいと思います。
「流体工学の基礎」は、ファンの特性曲線、ポンプの全揚程、ポンプ、ファンの 比速度、気液二層流(液体に気体が混ざって流れる場合のこと)、固気二層流( 固体を気体で運搬する場合のこと)、送風機の種類、粘性係数、動粘性係数、が 穴うめで出ます。計算問題は、ベルヌーイの式、流量、圧力損失、等価直径、全 揚程、ポンプ効率等が出ます。
「伝熱工学の基礎」は、無次元数(レイノズル数、プラントル数、ヌセルト数、 シャーウッド数、シュミット数等)強制対流伝熱、熱伝達率、熱伝導率、吸収率 、反射率、透過率、プランクの法則、ステファン・ボルツマンの法則、ウィーン の変位則、キルヒホッフの法則、熱交換器の種類、NTUが出ます。
計算問題では、積層板の伝熱量、形態係数、熱伝達率、等価直径、レイノズル数 等が出ます。
Ⅱの計算問題は難しいのですが、単位が付いているので暗記していなくても何を何で割るか又は掛けるかが類推できますので解けます。私も試験時に忘れてしまい、この方法で乗り切りました。また、このⅡは、あとのⅣにつながってい ます。
Ⅳでもいいますが、選択問題は問題の数が違いますので、小問題で何点という配点があると思います。(注:現在は、公式解答発表時に配点も公表されています。)
課目Ⅲ 燃料と燃焼
この課目では、化学反応式を用いて計算するものがあります。電気を勉強の方にはとっつきにくいかと思いますが、慣れてしまえば簡単です。化学反応式を用いて比例式等を作り、これを解くだけです。私は、農学系(半分化学専門) でしたので、この計算は楽勝でした。でもあきらめてはいけません。計算問題は一部です。
「燃料と燃焼管理」が2題、「燃焼計算」1題です。
「燃料と燃焼管理」は、2題で穴埋め問題です。ここで得点を取りましょう。過去問を5年分勉強すれば大丈夫だと思います。
出る項目は、燃料では、気体燃料(天然ガス、LPG、都市ガス油分解ガス等 )・液体燃料(ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油)・固体燃料(石炭)の特徴 、気体・液体・固体燃料の発熱量測定法、液体燃料の硫黄分試験方法、窒素分試 験方法、残留炭素分試験方法、固体燃料の元素分析方法、工業分析方法等です。 動粘度、引火点、流動点、オクタン価、セタン価は覚えてください。
燃焼では、バーナ燃焼、容器内燃焼、予混合燃焼、部分予混合燃焼、拡散燃焼 、過濃可燃限界濃度、希薄可燃限界濃度、火炎伝播、可燃範囲(水素、メタン、 アセチレン、プロパンの下限と上限の%)、液体燃料の燃焼方式、固体燃料の燃 焼方法等を覚えてください。
ガスバーナの方式、油バーナの特徴、、保炎器、低燃焼NOx燃焼法、固体燃 焼装置の種類が出ます。
ガス分析法では、
「酸素の分析では、ジルコニア酸素計」「二酸化炭素の分析では、密度法、熱伝導率法、赤外線吸収法」「窒素酸化物の分析では、化学発光方式、赤外線吸収方式、紫外線吸収方式、定電位電解方式」「硫黄酸化物の分析では、溶液導電率方式、赤外線吸収方式、紫外線吸収方式、 紫外線蛍光方式、定電位電解方式」がでます。
ばいじん、高温腐食、低温腐食、の内容も詳しく出ます。
次に「燃焼計算」ですが、燃焼の化学反応式から、比例計算等で、酸素量、理論 空気量、乾き燃焼ガス量、湿り燃焼ガス量、供給空気量、過剰空気量、残存酸素 量等を計算します。このとき、気体燃料と液体燃料では、計算方法が違いますの で注意してください。
「燃料及び燃焼管理」が2題ですのでこれに力点をおきますが、「燃焼計算」 も理解しないと合格点は望めません。十分練習しましょう。
以下 追記(2006.5.9)
Ⅲ「燃料と燃焼」
問題9 燃焼計算の問題の中身です。
H11(気体燃料:ブタン)
燃料1m3当たりのCO2発生量
空気比
乾き燃焼ガス中のO2体積%
湿り燃焼ガス量の削減%
H12(液体燃料:灯油)
炭素1Kg燃焼の発生CO2量
燃料1Kg当たりの発生CO2量
炭素、水素1Kg当たりの燃焼に必要な酸素量
燃料1Kg完全燃焼に必要な理論酸素量
理論空気量
空気比
乾き燃焼ガス中の残存酸素量
乾き燃焼ガス中のO2体積濃度
湿り燃焼ガス中のH2O発生量
湿り燃焼ガス中のH2O体積濃度
H13(液体燃料:重油から気体燃料:ブタンへ変更)
重油の炭素1Kg燃焼の発生CO2量
燃料1Kg当たりの発生CO2量
ブタンの炭素1燃焼の発生CO2量
重油をブタンのかえて減少するCO2発生量の%
ブタンの1m3燃焼の必要酸素量
理論空気量
ブタンの1m3燃焼の供給空気量
湿り燃焼ガス量
ブタンの1m3燃焼の発生H2O量
ブタンの1m3燃焼の発生H2O濃度
H14(気体燃料:プロパン)
燃料1m3完全燃焼に必要な理論酸素量
理論空気量
燃料1m3当たりの発生CO2量
乾き燃焼ガス量
燃料1m3当たりの発生H2O量
湿り燃焼ガス量
湿り燃焼ガス中のH2O濃度
供給空気量
燃料1m3当たりの過剰空気量
燃焼ガス中の残存酸素量
乾き燃焼ガスのO2濃度
H15(液体燃料:灯油)
燃料1Kgを完全燃焼させる必要酸素量
燃料1Kgを完全燃焼させる理論酸素量
理論空気量
燃料1Kg当たりの発生CO2量
燃料1Kg当たりの発生H2O量
湿り燃焼ガス量
理論湿り燃焼ガス量
水素1Kg当たりの発生H2O量
燃料の低発熱量
燃料1Kg当たりの熱風の量
燃料1Kg当たりの熱風の過剰空気量
熱風中のO2濃度量
H16(液体燃料:重油)
炭素1Kg燃焼の発生CO2量
燃料1Kg当たりの発生CO2量
乾き燃焼ガス量
水素1Kg燃焼の発生CO2量
燃料1Kg当たりの発生H2O量
湿り燃焼ガス量
燃料1Kg当たりの乾き燃焼ガス量
燃料1Kg当たりの理論酸素量
理論空気量
空気比
理論湿り燃焼ガス量
理論湿り燃焼ガス量の減少後の量
H17(気体燃料:プロパン)
燃料1m3を完全燃焼させる必要酸素量
理論空気量
供給空気量
乾き燃焼ガス量
侵入した空気量
燃料1m3当たりの過剰空気量
燃焼ガス中の残存酸素量
乾き燃焼ガスのO2濃度量%
燃料1m3当たりの発生H2O量
燃料1m3当たりの湿り燃焼ガス量
断熱燃焼ガス温度
課目Ⅳ 熱管理設備およびその管理
課目Ⅳは以下のような構成です。
計測及び制御 2題
熱利用設備(必須)
ボイラ~ガスタービン 2題
熱利用設備(選択)
・熱交換器・熱回収
・冷凍・空気調和
・工業炉・熱設備材料
・蒸留・蒸発・濃縮、乾燥、乾留・ガス化
の4題より2題選択
計測及び制御は、穴埋め問題です。計測では、温度計、湿度計、流量計、流速 計、圧力計がでます。それぞれ見ていきます。
温度計では、熱電温度計の原理、補償導線、熱電対の種類、抵抗温度計の原理 、種類と特徴、放射温度計の特徴、名称(2色放射温度計、光高温計)、ガラス 製温度計、バイメタル式温度計、水晶温度計が出題されています。
湿度計では、乾湿球湿度計、名称(アスマン通風湿度計)が出題されています 。
流量計では、差圧式流量計(JIS、オリフィス、ベルヌーイの定理、レイノ ズル数等)、面積流量計の原理(テーパ管、フロート)、特徴、電磁流量計の原 理(ファラデーの法則、磁界、電圧)特徴、超音波流量計の原理、特徴、容積式 流量計の特徴、渦流量計の原理(カルマン渦、ストロ-ハル数)短所、タービン 流量計(直管部)、コリオリ式流量計の原理、特徴、注意事項等が出題されてい る。
流速計では、ピトー管式流速計、熱式流速計が出題されている。
圧力計では、ブルドン管圧力計、差圧伝送器が出題されている。
自動制御では、制御量、目標値の定義、制御系の構成とブロック線図、フィー ドバック制御、フィードフォワード制御、比例動作またはP動作(偏差、オフセ ット)、積分動作またはI動作(積分時間)、微分動作またはD動作(微分時間 )が出題されている。
制御対象の特性では、1次遅れ要素、1次遅れ要素のステップ応答、むだ時間 要素、むだ時間+1次遅れ要素のステップ応答、伝達関数が出題されている。他 に、ステップ応答法、カスケード制御、プログラム制御が出題されている。
ラプラス変換による微分方程式の解き方も練習する必要があります。たまに、出題されることがあります。幸いなことに、私の受験した時は、出題されません でした。
ボイラ~ガスタービンでは、穴うめ問題と計算問題がでます。
ボイラでは、ボイラの分類と構造(丸ボイラ、炉筒煙管ボイラ、水管ボイラ、 自然循環ボイラ、強制循環ボイラ、貫流ボイラ)、高温腐食、低温腐食、ボイラ の制御装置、換算蒸発量、ボイラ効率、ボイラ効率の向上対策等が出題されてい る。
蒸気原動機では、蒸気タービンの原理と形式(熱エネルギー、速度エネルギー 、衝動式、反動式、熱落差(エンタルピー差)、動翼、反動度、絞り、絞り損失 、復水タービン、背圧タービン)、蒸気アキュムレータ(変圧式、定圧式)ドレ ン回収が出題されている。
内燃機関では、Ⅱ 熱と流体と流れの基礎で学習した各種理論サイクルが出てくる。圧縮比、比熱比、締切比、平均有効圧力、圧力比とコンバインド・サイク ルの組み合わせ方式を覚えてください。
計算問題では、全断熱熱落差、蒸気エンタルピー、蒸気流量、反動度、内部効率、軸出力、蒸気消費率等が出題される。これも、練習を重ねると、確実に点数が取れます。
課目Ⅳの選択問題に対する考察は次の記事にまとめてあります。
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