同期調相機の基礎理論(負の値になるインダクタンス)

電気機器

負の値になるインダクタンスの話

皆様こんにちは
今回のお題は「負の値になるインダクタンス」です。
毎度ながら、胡散臭い話ですし、これを覚えておいても実社会でどれほど役に立つか全く解らない話です。
いつもの通り、知らないより知っていた方が良い程度でお読み下さい。

平成 鹿年 骨月 吉日
サイタマドズニーランド大学(DSU) 学長 鹿の骨記

早速ですが下図をご覧下さい。

何でもない回路図です。
図1はインピーダンスがインダクタンス+抵抗の場合、図2はインピーダンスがキャパシタンス+抵抗の場合です。
図1の青色の部分がインダクタンスですが、原理的にこの値が「マイナスの値」になる事はありません。
図1は「j3[Ω]」として書いていますが、この値が負値を取って「-j3[Ω]」になったら図2になってしまい、リアクタンス分がインダクタンスでは無くキャパシタンスになっちゃいます。
逆に言えば、コイル分があるインピーダンスはリアクタンス分がインダクタンスになり、コンデンサ分が有るインピーダンスはリアクタンス分がキャパシタンスになります。
(両方有る場合は相殺になり、何れかになります。)

ところが世の中不思議なもので、コンデンサが無くても、リアクタンスの値を負値にする方法が有ると言う
のです。
ホントカイネ?×100倍 ==> 本当です。
コイルの回路の素子をイヂクリ回すとコンデンサになると言うのです。

さぁ骨流半分インチキ胡散臭い講義の始まり始まりぃ~・・・・

世の中には不思議な機械が沢山ありますが、電力会社の地域変電所に設置された「回転調相機」も結構変な部類に入ると思います。(図22参照 図だけ見て戻って下さい。)

この回転調相機は実は無負荷で回っている同期電動機です。この電動機は回転子が直流励磁の電磁石です。固定子が作る回転磁界の中で磁石がグルグル回っています。
直流励磁の電流値を調整すると、この電動機の力率が変化して、遅れ力率~進み力率に変化します。
「遅相無効電力を消費する負荷」~「進相無効電力を消費する負荷」に連続で変化させる事が出来ます。

無負荷で回っていますので、有効電力の消費は非常に小さな値です。
この様に、この電動機はわざわざ「無効電力」を消費させる為に設置します。
通常は「進相無効電力」を消費する様に運転します。

此処で疑問?
この装置の中には「コンデンサ」の素子が全くない。
にも関わらず「進相無効電力を消費する。」と言っている。
固定子は三相コイルを巻いたものであり回転磁界を作るが、コンデンサ素子になるようなものは一切無い。
回転子も同様で、直流電圧電源とコイルとで構成されていてコンデンサ素子など見あたらない。
これで、進相無効電力を消費する装置になると言っています。
手品か?インチキか?
手品でもインチキでも有りません。ちゃんとしたものです。
次ページ以降は「なんでこうなるの?」と言う話を書きます。

突然ですが、下図の磁束の様子と電流の様子を考えて下さい。

図3から解説します。
これは鉄芯にコイルをn回巻いて、交流電圧電源Eに接続したものです。
当然の結果として交流電流が流れますが、この電流をI3 とします。
この形態は「無負荷の変圧器」に該当します。
I3 は励磁電流となり、鉄芯内には交流磁束が流れます。
この磁束の実効値をB3 とします。
此処までは普通の話です。

さて、今度は図4です。
これは図3の鉄芯の一部が欠落して「空隙(隙間の事です。)」があるものです。
鉄芯の中は磁気回路になっていますが、この空隙が有ると磁気抵抗が増します。
磁気抵抗が増すと何がどうなるのでしょうか?
回路に加えている電圧電源は図3と同じものです。(電圧は変わらない。)
磁気抵抗が増えるから、磁束密度B4 が変わる?・・・NO!
実は、B3=B4 です。
磁束密度は変わりません。全く同じです。
加える電圧が同じで、コイル巻数が同じであれば、磁気抵抗が変わっても磁束は変わりません。
じゃぁ何が変わるのか?・・・==> 電流I4 が変わります。

磁気抵抗が増えましたので、同じ磁束を得るために電流が勝手に増えます。
結果として、図3と比較した場合、図4の機器は遅相無効電力消費量が増えます。
(電圧は変わらず、電流だけが増えるので、結果としてこうなる。)
これがトランスの場合ですと都合が悪いのですが、リアクトルの場合は都合が良い事になります。
実際、リアクトルはこの様に作られています。(多分?)

図3と図4の磁束は同じでした。
(何でこうなるかは説明しませんし、説明出来ません。何方か解説して下さい。)
じゃぁ図5はどうなるのか?

実に不思議ですが、磁気回路の世界では直感が旨く働かないような結果になります。
ここで覚えておいて欲しい事は「電圧巻数が同じ場合は、磁束は変わらない。」と言う事です。
これを使って次ページ以降で思いっきり胡散臭い説明をします。

今度は図6の様な回路を考えます。胡散臭い回路です。

何やら思いっきり胡散臭い回路です。
この時電流Iはどうなるのでしょうか?

交流定電流源の位相と周波数ですが下記の様に考えます。
周波数は、定電圧電源と同じとします。
位相は磁束と同じとします。
つまり、この電流源を接続することに依り、磁束密度は変化しませんが、定電圧電源から供給される励磁電流は減ります。

定電流源に依る磁束は、電流値が定電流源ですから、いかなる場合でも電流Im は変わりません。
つまり起磁力は変わりません。
この起磁力で、勝手に磁束を流してしまいます。
つまり、電流を図3の時の様に流さなくても、定電流源による起磁力で磁束(の変化)が発生し、磁気回路の磁束は図3の時と同じように保たれます。

結果として、電流Iは図3の時の電流I3 と比較すると少なくなります。

解りますかぁ~・・・
最初は図3と同じで、電圧電源側から供給される励磁電流で、磁束(の変化)が生じます。
これに、定電流源による磁束が加わりますが、鉄芯内を流れる磁束B(の変化)は変わりません。

結果として、電圧電源側の起磁力は少なくて済む事になり、励磁電流は減ります。
この様に、定電流源を用いたコイルを巻く事により、励磁電流を減らす事が可能です。
下図のように考えると解りやすいかも知れません。

下図のような場合を考えます。

今度は定電流の電流値と巻数値を変えます。
電流値は図3の時の電流と同じI3[A]で、巻数は電圧電源側と同じn回です。
この場合、定電圧電源側の電流Iはどうなってしまうのでしょうか?

実はI=0になります。
電圧電源側で電流を流して磁束を流さなくても、定電流側で磁束を流してくれますから、定電圧側では電流を流す必要が無くなります。

従って、Iはゼロ[A]になります。(なっちゃいます。)
この場合、定電圧電源からこのコイルを見ると「力率=100[%]」に見えます。
コイルの回路にもかかわらず、低電流源を加えてコネクリ回すと力率が 1.00 になるという事です。
次ではもっと頓珍漢な事が起きます。

今度は定電流側の電流値を図9の2倍にしたものです。
図9と比較すると、定電流側の起磁力は2倍になります。
この時定電圧側の電流Iはどうなってしまうのでしょうか?
実はI=-I3となります。
これは下図を見るとご理解を得られると思います。

さて以上の事を踏まえると下記のような事が言えます。
下図のような装置を作ると、遅相無効電力~進相無効電力消費装置を作る事が出来ます。

この装置は何処にもコンデンサは有りませんが進相無効電力消費装置になる事が出来ます。
つまり、電力コンデンサの代わりが出来ます。
また、最初はリアクトルとして動作しますかので、分路リアクトルとして使用することも出来ます。
一台の機械で、2つの働きをします。しかも連続可変容量です。

これが実現できたらスゴイと思いませんか?
実は、世の中にこの装置が存在するのです。
どうやって作るのか・・・この様に作ります。

図14と図15は等価になります。

図15~図17を周期的に繰り返して図14と等価になります。
つまり、定電流電源回路の代わりに、「回転する磁石」を持ってくれば良い事が解ります。
これで定電流回路を使わなくて済みます。(段々現実味を帯びてきた!)
さらにこれを改良します。

図19の様なものを作る必要が有ります。

これは、磁石の部分を下図のようにすれば実現します。

図22の様なものを「回転調相機」と言います。
同期電動機の勉強をされた方はお解りだと思いますが、この機械は「無負荷の同期電動機」です。
回転しながら無効電力の調整(調相と言います。)をしますのでこの機械の事を別名「ロータリーコンデンサ」と言います。

この様に、コンデンサが全く無いにもかかわらず、進み位相の電流を流す装置を作る事が出来ます。
つまり、「負の値のインダクタンス」です。
実に不思議ですが、最初に考えた人はアタマが良いと思います。
尚、実際の容量は 300[MVA]程度なのだそうです。(300,000[kVA]です。ドヒャァ~・・・馬鹿デカイ!)
又直流励磁電流を増減させると無効電力を調整出来ますが、これをグラフに表すと下記のようになります。

オシマイ

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