零相変流器(ZCT)の構造・原理・用途や回路の結線

変成器・継電器

「零相変流器」というのは、系統に地絡事故発生した際に「地絡電流」を検出して取り出す変流器をいい、「地絡保護」用に用いる変流器です。「3相のベクトル合成した電気を物理的に取り出す」ことができる仕組みになっています。具体的な役割・構造について説明します。

なお、下の記事は私(管理人)が書いた超概念的な内容です。もっと理論的な解説は鹿の骨さんが下さった以下を参照ください。

零相変流器(ZCT)とは

 零相変流器の構造について説明します。零相変流器は通常の変流器とほとんど変わりません。使い方が違います。まず下の絵をご覧下さい。

 ご覧のとおり、決定的な違いは変流器に通す主回路の電線です。通常の変流器であれば1つの変流器に1相分の電線を通し1相分の電流を変流器2次側へ取り出します。

 ところが零相変流器では3相分(交流は通常3相交流で送電されています)の電線を一括して変流器に通しています。このように変流器に電線を通すと2次側にはどのような電流が流れるのでしょうか。

 ZCTの2次側の電流を次で説明します。

零相変流器(ZCT)2次側に流れる電流

 3相分の電流を一括して変流器に通すと、3相分の電流をベクトル合成した電流が2次側に流れます。ベクトル合成された電流はどうなるのでしょうか?実は対称3相交流3相分の電流を合成させると”0”になるのです。対称3相交流は、各相とも同じ大きさでそれぞれが120°ずつ位相がずれているのでこのようになります。

したがって、通常状態(事故が生じていない)では変流器の2次側には電流は流れていません。電流の不平衡があっても、地絡事故が起きていない限りベクトル合成すると打ち消している状態になりますので、ZCT2次には電流は流れません。

ではどのような時に電流が流れるのかを見てみます。

零相変流器(ZCT)2次側に電流が流れるケース

 零相変流器の二次側に電流が流れる時は、3相の電流のバランスが崩れて、打ち消すことができない時となります。なぜバランスがくずれるのでしょうか。それは、電気回路に1線地絡事故(3相の電線のうち1本の電線から電気が大地に流れた状態)が発生したときということになります。

 下図は「非接地系統(=6kV系統)」で地絡事故が生じたときの電流の分布です。

受電設備の母線で1線地絡事故が発生した例を示します。地絡ということは、大地に電流が流れたということを指します。大地に流れた”地絡電流”は地絡した相以外の相の電線の対地静電容量を通って電流が流れます。

 対地静電容量を通じて流れた電流は受電設備の変圧器巻線を通って地絡した相に向かって流入し、地絡点に向かって流れます。地絡電流はこうして流れ続けます。

この地絡電流が流れ続けているところで、零相変流器へ流れる電流をご覧下さい。零相変流器のところを流れる電流のバランスがくずれています。これによって零相変流器2次側には電流が流れるということです。

 零相変流器の2次側に保護継電器を設置しておき、電流が流れたら遮断器を開放するようにしておけば地絡事故発生した場合に迅速に故障箇所を電気回路から切り離すことができます。これが零相変流器の設置目的と使用法です。

(参考)配電線保護について

 配電線保護に関して、少しだけですがGR付PAS関連の記事に整理していますのでよければ参考に見てみてください。

まとめ

 最後にここまでのおさらいとしてもう一度変流器と零相変流器の違いを示します。

・変流器
 中に通す導体は1本
 短絡保護や計器用に用いる

・零相変流器
 中に通す導体は3本(3相分)
 地絡保護用に用いる

零相変流器の単線結線図では記号に3が書いてありますが、この意味はこの接続法を表しています。