【エネルギー管理士】熱・電気のどっちで受験するべきか

エネルギー管理士

 エネルギー管理士は、従来「熱管理士」と「電気管理士」で明確に別々の資格として分かれていました。平成18年度の制度改正に伴い「エネルギー管理士」に一本化されました。一方で受験は「電気分野」「熱分野」でどちらかを選ぶ制度となっており、どちらを受験すべきかというテーマについて述べてみます。

なお、試験制度については以下を参照ください。

「熱分野」「電気分野」どちらで受験しても同じ「エネルギー管理士」

 前述したように、平成18年度までは明確に分かれていたエネルギー管理士ですが、新制度移行後は、一本化し、どちらの分野で受験しても同じ扱いとなりました。

 新制度においては、合格証ではどの分野を選択して合格したか記載がありますが、免状には区別はありません。

(参考)旧制度の電気管理士時代はこのような免状でした。「電気管理士」と書いているわけではありませんが、「エネルギー管理士(電気)」となっていました。

アンケートのお願い

 様々な見方ができるこのテーマです。あなたの考えを教えていただけないでしょうか。率直なご意見を教えてください。

合格率から見る難易度の比較

 難易度を合格率で比較してみます。
なお、どちらも受験者数はどちらも5,000人前後と同程度です。
(注)データが2012年までなのは、2012年までしか分野別で公表されていないため。

平均合格率では10%程度「熱分野」の方が合格率が高い。

熱と電気の一体管理後の合格率や受験者数等の詳細なデータについては次の記事にあります

 ジャンルが異なる「熱」「電気」なので、単純に比較はできませんが10%程度の合格率の違いは大きいです。単純難易度でいうと「熱分野」の方が有利(難易度が低め)と言えそうです。

難易度の体感

 合格率以外に「難易度」を数値で表すことはできませんし、受験される方個人の持っている知識やバックボーンにも左右されて感じる難易度は変わってしまいますので一概に評価はできません。

 熱分野に合格された方々から頂いた情報(体験記)を掲載します。いずれも「電気」の視点での投稿を頂いており、私としては大変参考になります。

全体的に3種とどっこいどっこい。世間にいう「電気より熱のほうが易しい」と いうのは本当です。殆どが文字の選択で、計算問題は極わずか。

1級ボイラー、危険物乙 4などの延長線上にあると思えばよいでしょう。 電験からいきなり熱を受ける人は違和感を覚えるかも。

熱力学の基礎や燃焼計算は電験2種の教科書にありますが問題には出ないし、熱管理士ではこれがメインなので避けて通れない。

流体工学は水力、送風機など3種レベルですが、アプローチの仕方が違うので初めは面食らうかも。計測制御は3種並か、やや易しい程度。でも、発熱・放熱・比熱・質量の関係から 温度上昇を求める微分方程式を作れる程度の勉強は必要かも。

【エネルギー管理士】(熱)合格体験記 おじさん様

 実は今回が初めての受験ではなく、10年前に電気分野で合格しており既に免状も持っていたのですが、「熱分野(旧熱管理士)」の免状があるとボイラー関係などの他資格の受験資格になるため今回受験を致しました。つきましては、どちらの分野で受けるか悩んでいる方向けに記したいと思います。

この結論としては、
電気技術者として電気をもっと学びたい方や今後電験2種等の上位資格を目指していきたい方、また強電分野や数学、物理が得意な方は「電気分野」
・電気に限らずプラントに関する知識を幅広く学びたい方や暗記が得意な方、また電験3種は取ったけどその先に進む予定がない方は「熱分野」

が良いのではないかと思います。

 基本的には自身の専攻と一致する分野を選ぶことをお勧めしますが、電気科卒であっても「熱分野」での受験も同じくらいにお勧めできます。その理由としては、エネルギー管理士試験の電気分野を目指す方は、電験3種に合格して来られた方がほとんどだと思いますが、この熱分野もまた電験と出題範囲がかなり被っており、それをもうある程度習得している方々であるという点です。

 熱分野の熱力学に出るランキン、ブレイントンサイクルや発電用ボイラー、蒸気発電プラントを構成する機器の概要は火力発電の分野で学んでおり予備知識がありますし、流体力学で出てくるベルヌーイの定理や水撃現象も水力発電でしっかり学びます。また送風機やポンプ、キャビテーションに関する知識も水車の話そのものですし、システム制御も確実に出題されますが電気分野や電験2種で出るものと比べるとずいぶんと平易で基本的な知識しか問われず、貴重な得点源となります。そのほか熱電対などの熱利用プラントの計装関係の知識も出ますが、電気科の方が有利ではないかと感じるほどでした。

 また熱分野の方が計算問題の量やその難易度が低く、微分や積分の考え方までしなければならないのは課目Ⅱの熱力学の一部くらいであり、それ以外は四則演算的な考え方で済んでしまいます。また機械分野~化学分野の範囲が幅広く出るため、深い知識を問われることもありません。こういった面から見ても、巷で言われる「熱分野の方が簡単」というのは恐らく本当なのだと感じます。

これまで電気一本で進んできた私にとっては、熱、圧力や化学などの異分野へ飛び込み視野を広げることができた貴重な経験でしたので、特にこだわりの無い方には「熱分野」をお勧めしたいと思います。

【エネルギー管理士】(熱)合格体験記 はむぞー様

一般的な評価

 定量的なデータがない中ですが、一般的に聞く話では、「熱の方が難易度が低い」とされているようです。「電気の方が難易度が低い」という話は聞いたことがありません。両方の分野が分かる人の評価としてはそのような話が多いです。

予備知識がない状態でどちらかを受験する場合は、「熱分野」の方が取り組みやすい

というのは概ね事実のようです。

熱分野は計算問題が少なく、文章題が多いのもその要因です。予備知識の無い初学者がいきなり取り組むとすれば理論的な理解をする事柄が多い電気分野の方がトータル勉強時間は多く必要なようです。文系の方でもじっくりやればどうにかなると聞いたこともあります。

電気分野は、電気工学系の大学を出て電気系の仕事をしている人でも電験3種を独学でなかなか理解が進まない方が多いようなので、電気を予備知識無しに独学でやるのはハードルが高いようです。

「熱分野」と「電気分野」のどっちを受験すべきか

 ここまでの説明では「熱分野」推しに見えますが、そうではありません。

結論としては

ご自身の専門やバックボーン、将来を踏まえて決めるべき

と考えます。

機械系の学歴をお持ちであったり、危険物取扱者[乙4]や公害防止管理者[大気](←熱分野と範囲が近いらしい)、ボイラー技士を持っているもしくは将来的にめざしてゆく(仕事のジャンル含め)のであれば「熱分野」

新制度では電気も熱も同じ「エネルギー管理士」と書きましたが、特級や1級ボイラー技士の受験資格やボイラー・タービン主任技術者の申請資格の条件の1つに、「エネルギー管理士(熱)」という表現が残っているので、将来的にこれらの資格取得を視野に入れている場合は熱分野がよいと思います。

電気系の学歴をお持ちであったり、電気主任技術者や電気工事士を持っている、もしくは将来的に目指してゆく(仕事のジャンル含め)のであれば「電気分野」

特に、電気分野は電気主任技術者と試験範囲が重複している部分が大きいので、親和性がとても高く、電気分野がおすすめです。

同時受験も視野にいれてよいです。メリットデメリットがあるので、別の記事にまとめています。

なお、電験を持っていてもあまりに昔過ぎてまったく覚えてければ熱分野もありだと思います。事実、私も2級ボイラー技士や危険物取扱者(乙4類)は持っていますがぜんぜん覚えていないので、熱分野の問題は見てもまったくピンときません。

各分野の概要

 熱分野と電気分野の課目毎の特徴をまとめている記事を作っています。ピンとくる方で選ぶことも1つだと思います。

まとめ

次を結論とします。

  • 初学者(および予備知識を完全に失った人)は「熱分野」
  • 予備知識(関連資格)があればそちらを受験。
  • 将来的に取得したい分野の資格もしくは業種があればそちらを受験。

当たり前で少し物足りない結論かもしれません。