同期発電機の短絡比とは?~三相短絡曲線・無負荷飽和曲線~

電気機器

  同期機には「短絡比(たんらくひ)」という便利な定数があります。意味が分からなくても使うことはできます。(使い方を覚えれば計算に役立つ)ですが、何を意味するかキチンと理解するのは難しい内容です。短絡比を知ることで同期機の電気的な仕組みについて理解が深まると思います。

こちらの記事は「鹿の骨」さんにご投稿いただいた貴重な資料です。いつもありがとうございます。

短絡比の話

皆様こんにちは
今回のお題は「同期発電機の短絡比」です。
世の中の商用発電機の事実上100%は同期発電機です。
この発電機の特性値に「短絡比」と言う指数があるのですが、この数値の話です。
この話を理解されても実社会でどれほど役に立つかは疑問ですが、お時間があればお読み下さい。

宇宙元年 鹿月 骨日
さいたまドズニーランド大学 学長 鹿の骨記

さて、参考書等を見ると、短絡比の説明として次のように書かれています。

短絡比とは
同期発電機の出力端子を開放し、界磁回路に励磁電流を流した時に端子電圧が定格電圧Vn になる時の励磁電流をIfv とする。
同期発電機の出力端子を短絡させ、界磁回路に励磁電流を流した時に電機子巻線に流れる電流が定格電流Inになる時の励磁電流をIfi とする。

この時、短絡比は下記の式で定義される値を言う。

これで理解できる方は下記の説明をお読みになる必要はありません。
普通はナンジャコリャ?です。

さぁ~・・骨流インチキ(臭い)講座の始まりはじまりぃ~
まずは短絡比の説明です。
短絡比とは名前の通り、同期発電機を「ある状態」にして出力端子を短絡させた時の、「何か」と
基準になる何か」との比を言います。

同期発電機の「ある状態」とは、無負荷運転で端子電圧が定格電圧の状態を言います。
何か」とは電機子電流です。

基準となる何か」とは定格電機子電流(=定格電流)です。
この様に短絡電流と定格電流の比を言いますので、「短絡比」と言います。

励磁電流とは無関係の話です。
これらを図に示します。
尚、この説明には励磁電流は出てきません。
キッパリ潔く忘れて下さい。
下図は「ある状態」の図です。

図1はなにやら怪しげな回路図です。
発電機を等価回路として描いた場合、上記のように「定電圧電源」+「内部インピーダンス」として描く事が出来ます。
この際、「同期インピーダンス」は言葉に惑わされずに、単に「内部インピーダンス」として考えます。
同期インピーダンスだろうが動悸インピーダンスだろうが動機インピーダンスだろうがそんな事はお構いなしに単に「内部インピーダンス」として考えます。
この回路の出力端子を短絡させると下図になります。

下図は定格運転状態を示す図です。
電流、電圧の値に注意して下さい。

短絡比の値は下記の計算式になります。

直感的に考えると、この値はとてつもなく大きな値になりそうですが、実際は1.○○程度の値で、あま
り大きな値にはなりません。(1.20 程度が普通らしい?)

ここで、Zn を算出する方法を考えます。
計算の前提として、短絡比=K、定格電圧Vn、定格電流In は既知(前もって解っている)とします。
図2の回路図で算出が可能です。
短絡電流=Is=En÷Zn ですし、Is=K・In です。
Zn=En/Is=En/(K・In)=(Vn/√3)/(K・In)
の計算式で算出出来ます。

今度はこのインピーダンスの値をパーセントインピーダンスで表す事を考えます。
パーセントインピーダンスを計算する時のお作法として重要な事は、基準値を幾つにするか、と言う事
です。
此処では、電圧の基準値を定格電圧の1/√3 の値、つまり線間電圧では無く、相電圧の値とします。
電流の基準値はそのまま定格電流とします。

パーセントインピーダンスの計算式は下記になります。
%Z=内部インピーダンス×定格電流÷基準電圧×100[%]
  =(Zn・In/En)×100[%]

この計算式に上の計算結果(Zn=En/(K・In))を代入すると
 ={En/(K・In)}・(In/En)×100[%]
 =(En/In)・(In/En)・(1/K)×100[%]
 =(1/K)×100[%]
となります。

早い話、通常の内部インピーダンスをもった電源回路の計算と同じです。

この式は「同期インピーダンスをパーセントインピーダンスの値で示すと、短絡比の逆数のパーセント
値になる。
」事を示しています。

この様に、励磁電流、三相短絡曲線、無負荷飽和曲線などは出て来ない話で説明は出来ます。
励磁電流を用いて表した値は、今回の話を別の側面から計算する時の計算手法です。

下図は回転界磁型同期発電機(電磁石の方が回るタイプ)を模式図として描いたものです。
無負荷の状態で描いています。

この回路図の励磁電流を横軸、発生する電圧を縦軸に取ってグラフを描くと下図になります。

励磁電流(直流電流)を沢山流すと高い電圧(交流電圧)が発生し、電流が少ないと電圧は低くなります。
グラフが線形にならないのは、磁性体の特性に依ります。
電流値を際限なく大きくしていくと、電圧は無限に高くなるわけでは無く、ある値で漸近線に到達します。
これは回転子電磁石に磁気飽和があるためです。
(電磁石は無限に強い磁石になれる訳では無い。何処かで限界が来る。これを磁気飽和と言う。)

今度は出力端を短絡し、短絡電流を流します。

この回路図の励磁電流を横軸、固定子に流れる電流を縦軸に取ってグラフを描くと下図になります。

励磁電流(直流電流)を沢山流すと高い電圧(交流電圧)が発生し、電機子電流は沢山流れます。
励磁電流が少ないと電機子電流も少なくなります。
「三相短絡曲線」と書いてありますが、この線は「直線」になります。
何で「曲線」と言うのかは解りません。最初に名前を付けた人が決めたからでしょうか?

今度は二つのグラフを重ねて見ます。
下図は、出力端子を短絡させ、電機子電流が定格電流になるように励磁電流を流した時を書いています。

出力端子を短絡させ、電機子電流が定格電流になるように励磁電流を調節します。
この時の励磁電流をIfiとします。
励磁電流をそのままにして、出力端子を開放すると、端子に電圧が発生しますが、この時の値は「無負荷飽
和曲線」で求める事が出来ます。
この電圧値は励磁電流がIfiの時の誘導起電力そのものです。
(電流が流れていないので、誘導起電力がそのまま端子に出現する。)
この時の電圧は、定格電圧に到達せず、低い値になります。
定格電圧の値を発電しなくても、短絡電流が定格電流になる電流は流せるという意味です。

今度も二つのグラフを重ねて見ますが、今回は重ねる順序が逆です。
先に無負荷飽和曲線を持ってきます。

今回は比較の仕方が逆です。
まず、出力端子開放で定格電圧を発生させる励磁電流Ifvを流します。
この励磁電流をそのままにして、出力端子を短絡させると、短絡電流Is が流れます。
短絡電流Is は三相短絡曲線により求める事が出来ます。
励磁電流をIfvとした時で、出力端子を短絡した場合の電流の動作点は、この曲線(直線)上にあります。
従って、この時の電機子電流値の読みはそのまま短絡電流Is です。の部分。

短絡比が分かると何がわかるのか

短絡比が解ると何が解るかの話です。
短絡比は1.00付近の値になると書きましたが、1.00の場合に何がどうなるのかを書きます。
短絡比が「1.00」だと言う事は、無負荷で定格電圧が発生している発電機を三相短絡させた場合に流れる電流Is と、定格電流In が同じ値になるという事です。

同期インピーダンスはインダクタンス分ですから、jX[Ω]として表されます。
仮に負荷としてjX[Ω]の負荷を接続した場合、発電機の出力端子電圧が定格電圧になる為には、発電電圧は定格電圧の2倍で無ければならない理屈になります。

電圧=電流×インピーダンスですし、電圧降下は電流×内部インピーダンスです。
ベクトル図に書くと次に様になります。(内部インピーダンスは同期インピーダンスのみとする。)

短絡比が「0.8」及び「1.2」の場合は下図になります。

短絡比が「1.00」以下の場合は、定格電圧、定格電流で運転するためには、発生する電圧を定格電圧の2倍以上の電圧にする必要がある事を示しています。
「1.00」以上の場合は1.○○倍になります。
負荷の力率が「0.00」の場合で書きましたが、不自然ですので、力率=1.00の場合を次ページに示します。
(力率=1.00も特異値ですが・・・)

短絡比が0.8の場合と1.2の場合を記載します。

これらの場合で、短絡事故が起きた時にどの程度の短絡電流が流れるのかを考えてみましょう。
図11の短絡比=0.8力率=0の場合
短絡比が0.8だと言う事は、無負荷時に発生している電圧が定格電圧の時に短絡させた短絡電流が定格電流の0.8倍だと言う事です。
図11の場合はこの発生電圧が2.25倍になっていますから、短絡電流も2.25倍になります。

図11の短絡電流=定格電流×短絡比×2.25倍
=In×0.8倍×2.25倍
=In×1.8倍
同様に図12~14を計算すると
図12短絡電流=In×1.2倍×1.83倍=In×2.196倍
図13短絡電流=In×0.8倍×1.60倍=In×1.28倍
図14短絡電流=In×1.2倍×1.30倍=In×1.56倍
となります。
いずれの場合も力率が特異値ですから、一般的な値の力率=0.8遅れの場合を検証して見ましょう。

短絡比が0.8の場合と1.2の場合を記載します。力率=0.8遅れ。

これらの場合で、短絡電流を計算すると
図15の場合
短絡電流=定格電流×短絡比×2.01倍
    =In×0.8倍×2.01倍
    ≒In×1.6倍
同様に図16の場合は
短絡電流=定格電流×短絡比×1.64倍
    =In×1.2倍×1.64倍
    ≒In×1.97倍
となります。
いずれにせよとてつもなく大きな値にはなりません。
従って次の事が言えます。

同期発電機の内部インピーダンスは非常に大きい。短絡比が大きくなると、短絡電流も大きくなる。
どうして同期発電機の内部インピーダンスがこの様に大きな値になるのかは、次回とします。
「横軸インピーダンス」とか「縦軸インピーダンス」なんてのが出てきます。
ナンジャコリャです。

短絡比の話【PDF版】

コメント

  1. 太田実(75歳です。よろしくお願いします) より:

    三相同期発電機で短絡電流を語るとき、無負荷(電流無し)で定格電圧をかけた状態から短絡させるようです。無負荷の場合に端子間を電圧計で定格電圧にすると電圧降下がないので起電力も定格電圧になっています。この状態から短絡させると定格電圧/同期インピーダンスの短絡電流が流れます。この電流値は定格電流値の1.2倍位です(たいしたことは無い)。ところで実際に運転中に短絡が起こる場合は起電力は同期インピーダンスの電圧降下分と定格負荷での電圧降下分の両方を賄っている筈なので定格電圧6600Vとするとこれは定格負荷向けの電圧なので起電力はこの倍くらいあることになります。すると負荷状態で短絡すると定格負荷がなくなるので短絡電流はもっと大きくなると思います。なぜ無負荷から短絡させてそれで良しとするのか判りませんがご存じでしたらお教え下さい。

    • 管理人 より:

      太田さま
      はじめまして管理人です。
      直接その理由は存じ上げないので私の考えを書いてみます。

      短絡比は一定条件下での「機器の仕様」「機器の定格値」と受け止めればよいのではないでしょうか。パーセントインピーダンスと同じで、一定条件下での測定値をその機器の定数として得ることができる、という発想。

      負荷を付けた時の挙動は書いていらっしゃるとおりだと思いますが、無負荷時の短絡電流をそのまま使うことが目的ではなくて、内部インピーダンス(同期インピーダンス)によって得られるその値(短絡比やパーセントインピーダンス等)と、事故点までのパーセントインピーダンスを使えば事故電流は容易に求まります。

      パーセントインピーダンスを使えば運転電圧は意識する必要がないので、便利な定数です。

      ご質問に対する一つの考え方としては、「この測定方法で問題ないのか?」ではなくて、「この測定方法で得られた値をどう使うか?」という視点で見てみられたらお答えが見つかるヒントになるのではと思いました。

      明確なお答えでなくて申し訳ありません。

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