変圧器のV結線とは~ベクトル・動作原理と利用率86.6%~

電気機器

 単相変圧器2台をVに結線することで平衡3相電力の送電が可能になるV結線について、その動作原理をベクトル図を使って説明を頂いています。回路をバラバラにしたりΔ結線との比較をしたりかみ砕いた説明で、V結線のベクトル・理論は理解が難しいため、本記事により別視点での理解が進むものと思います。

こちらの記事は「鹿の骨」さんにご投稿いただいた貴重な資料です。いつもありがとうございます。

V結線の話

 以前に作ったV結線の解説書(擬き)がありますが、読み返して見るとページ数の割には内容が頓珍漢なところが有り、いまいちの感じがします。
あれから、時間も経ちましたので、改訂版を作る事にしました。
元々、この○○の話シリーズは、小生が自分で理解をするために作ったものです。
今回も、自分なりに整理したつもりですが、やはり頓珍漢な部分が有るかも知れません。
お時間が有りましたらお読み下さい。
尚、この書き込みはベクトル図、複素数座標及び極座標を理解されていることを前提としています。
予めご承知おき下さい。

平成 鹿年 骨月 吉日
貧電工附属 埼玉ドズニーランド大学(SDU)学長 鹿の骨

下図をご覧下さい。

この図を理解出来る人・・・次ページ以降の解説を読む必要は有りません。
この図を理解出来ない人・・次ページ以降の解説を辛抱強く読んで下さい。

辛抱強く読んでも理解出来なかった人・・・申し訳ありません。他の参考書をお読み下さい。

図2は変なベクトル図です。
回路図に無い、Ern なんて言う電圧が基準ベクトルになっている。
中性点Nなんて何処にもナイジャン?ナンジャコリャ???
鹿の骨流講義の始まり始まり・・・

早速ですが、解説を始めます。
V結線を理解する時に要となる部分が有ります。下記の2つです。
その1
三相回路の解析を行う場合、力率角が何処に現れているかを理解すること。
その2
トランスの巻き線電流と配線の線電流の関係を理解すること。

尚、この2点を既に理解されている方は、図24まで飛んで下さい。

その1から話を始めます。
三相回路のベクトル図には色々なベクトルが出てきます。
負荷は固有の力率を持ち力率角とよばれる位相角があります。
この角度が何処に現れているかを正しく理解することが重要です。
この話はV結線に限らず、三相回路の考え方の基礎となるものです。確実にマスターしてください。
下記に単相の場合の例を記載します。

この図は理解出来ると思います。(幾ら何でもこれがワカランとは言うなよ!)
ベクトル図の中でも最も基本のものです。

上図は単相の場合です。
三相の場合も、基本的にこの図と大きくは変わりません。
単相と、三相の異なる部分は、電源が3セット有ることです。
基本的には、単相×3セットと言えます。
手始めに、次ページの問題を考えて下さい。

問題1
図5は三相電圧電源である。(スター結線)
端子RSTNに係わる電圧ベクトルを総て描きなさい。
(∠は位相角を示します。値の単位は[度]です。)

電圧ベクトルを描けというので、捉えず描いたのが図6です。

図6の図は間違いではありませんが、不十分です。
正解は下図の図7になります。
ベクトル図を書くときのお作法に従って、基準ベクトルを12時の方向では無く、3時の方向で描いています。

以下の説明で、ベクトル図を描くときは総て3時の方向を基準方向とします。

図7のベクトル図を描き直すと図8になります。
この様に、電圧源があるから描ける電圧ベクトル以外に、誘導される電圧に依る電圧ベクトルも書けます。
ここで学ぶべき事は
電圧ベクトルは、色々描けると言うことです。

此処で、基準ベクトル=3時の方向がお作法の話を書きます。ベクトル図は左図に示す通り、複素数座標で描きます。基準とするベクトルは 長さ∠±0 で示されますので、虚数部の値は必ずゼロになります。従って、自動的に3時の方向を向くことになります。座標そのものを、90度回して、12時6時の方向を実数軸にすることもありますが、3時の方向を実数軸のプラス方向に描くのが一般的です。回路図を描くときは、見やすさ理解のし易さ等で、色々な方向を用いて回路図が描かれます。
ですから、回路図の電源方向等と、このベクトル図の方向が合わない場合が多々あります。ベクトル図は色々描く事が多いと思いますが、一般的な描き方に慣れて置いた方が良いと思います。

この解説書では、ベクトル図を描くときは、特に断り書きを入れない場合、3時の方向が実数の正方向とします。

引き続き次の問題を考えて下さい。
問題2
2ページ図5の電源に下図のような負荷を接続した。
流れる電流値を計算し、ベクトル図に示しなさい。基準ベクトルはErn とする。
尚、配線のインピーダンスは無視する。

コレを図示すると図11になります。

図11のベクトル図を三相分描くと図12になります。
ところで、線電流は相電圧に対して力率角を持ちますが、どうしてそうなるのかは、此処ではなるからなるとしてください。
線間電圧VrsVstVtr は無関係です。
後の方で、このカラクリは説明したいと思います。※1

引き続き次の問題を考えて下さい。

問題3
前ページ図10の電源に代えて下図のような電源を負荷に接続した。
流れる電流値を計算し、ベクトル図に示しなさい。基準ベクトルは何でも良い。
尚、配線のインピーダンスは無視する。

何やら怪しげな問題です。
前問題のスター電源をデルタ電源に置換したものです。
電源は代わりましたが、線間電圧は変わりません
従って、線電流は、前問の値と変わりません。
|Ir|=|Is|=|It|=30[A]です。
線電流の大きさは解っていますので、ベクトル図は描けるハズです。
・・・描けない!」そうです、描けません!
基準とすべき相電圧がこの結線にはありません。さて、どうしたものか?
この様な場合は、仮想の相電圧を定義します。図14参照。

この仮想の相電圧を基準として、ベクトル図を書くと図15になります。
基準となるベクトルErnは実在しない電圧です。中性点Nも実在しません。
力率角30度はこの実在しない相電圧と、線電流の挟み角になります。

因みに、電圧Vrsと電流Ir との相差角は60度です。
この様に、力率角は思わぬところにあります。この考え方は三相回路の考え方の基本です。
納得がいかないかも知れませんので、後の方に詳しい説明を記載します。※1

力率角の説明は此処までとします。

今度は電圧電源に流れる電流の話です。
引き続き次の問題を考えて下さい。

問題4
図10の電圧電源に流れる電流を計算し、ベクトル図を描きなさい。

これは考えるまでも無い問題です。
電圧電源RNに流れる電流は線電流Ir と同じ電流です。
ベクトル図は4ページの図12のまんまです。

今度はデルタの場合です。

問題5
図13の電圧電源に流れる電流を計算し、ベクトル図を描きなさい。

ベクトル図を次項に示します。

一相分を描いたのが図16です。基準とするベクトルは架空のErn です。
三相分を描くと図17になります。
図17では基準ベクトルは描いていません。ご注意下さい。

これで、電圧電源に流れる電流と、線電流の違いを理解出来れば良いのですが、チョット無理があります。
理解出来ない場合は、お手数ですが、前項の計算手法をお読みになってから、戻ってきて下さい。
此処で、電圧電源とトランスの巻線の関係を書きます。
結論を先に書けば、回路解析上両者は同じです。

この両者が違うものとして扱わなければならないとしたら、それはトランスが定電圧源として見なせないことを意味します。
そんなトランスは通常では使い物になりません。
従って、両者は同じものです。

やっとV結線の話に入ります。
V結線の説明手法は色々ですが、此処ではデルタ結線から、1バンクを取り去ったものとして説明します。早速ですが又問題を出しますので、考えて下さい。

問題5
図19はV結線と同等の電圧電源である。
この電圧電源のベクトル図を描け。

ベクトル図を描いたものが図20です。
デルタ結線の場合と全く同じです。どうしてこの様なベクトル図が描けるのか?
これは考えるまでも無いことです。
V結線は三相の結線です。
従って、120度位相の電圧べくトルが3つ描けなかったら、それは三相電源ではありません。
デルタ結線と同じ電圧ベクトル図になることは当たり前の事です。
5ページ図15のベクトル図の内、電圧に関する部分と見比べて下さい。
全く同じ図であることが解ります。
端子TR間には誘導により電圧が発生し、この電圧はデルタ結線の場合のVtr と全く同じです。

世の中の参考書には、V結線の電圧ベクトルを下図A、Bの様に記載したものもあります。
これらは、どの様な意図を持って描かれたかは解りませんが、電圧に関するものはCが正解として扱います。
このC図を描き直すと図20になります。
基準ベクトルはErn です。(基準のベクトルを3時の方向に描く。)

次にV結線の電流の話に入ります。
話の前に又問題を出しますので、考えて下さい。

問題6
電源の構成が解らない電源がある。
この電源に下図の様に負荷を接続した。
この電源は下図A図、B図、C図の内、何れか?
又、各線電流を計算しなさい。

A図はスター結線、B図はデルタ結線、C図はV結線です。
解答は、何れの結線でもOK。 <=これが解答。
一見不可解な解答の様に思えるかも知れませんが、図22の様に結線内容を隠した電源を、負荷側から見ると、中の結線はAでもBでもCでも良いのです。
総てR,S,T間の電圧は120度位相の200Vです。
だからどれでも良いことになります。

又線電流の計算ですが、これは計算するまでも無いのです。
|Ir|=|Is|=|It|=30[A]です。
A~Cの電源パターン全部に共通です。
つまり、線電流は電源の結線に無関係です。
スターでもデルタでもVでも、線電流は全部同じです。

電圧は同じ。線電流も同じ。違うのは電源の中を通過する電流です。
スターとデルタの電源内を通過する電流は既に記載しました。
問題はV結線の中を通過する電流です。
次ページに解説を記載します。

電源部分、つまりトランスの巻線部分の電流の解析をします。
下記の回路は今までと同じ負荷をV結線に電源に接続したものです。
電流の向き等は一切変えていません。
デルタから1バンクを取っただけですから、この様な回路図が書けます。 <==重要!
今まで使っていた色を少し変えています。ご注意下さい。

まずIrs はどの様な電流か考えてみましょう。
図24図をヨーク見ると解ります。
Irs=Irです。
Irs は電圧源を出発して、点●Rを通過し、そのまま線電流Irになります。
従って、両者は全く同じ電流です。
電圧Vrsと電流Irs の関係のみに注目して取り敢えずベクトル図を描いて見ましょう。

結果を見ると解りますが、IrsVrs に対して60度の遅れ位相角を持ちます。
力率角は本来30度ですが、この30度に足してさらに30度遅れます。
と言って力率が COSθ=COS60=0.5 になるわけではありません。
力率はあくまでも COSθ=COS30=0.866 です。
次はIstの検討です。

Ist の電流を理解するのは、厄介です。ワケワカランです。
この部分が、V結線で一番解らないところです。これが理解出来たらV結線が解った事になります。
図24のIst に関する部分のみを抽出して、解説します。

図26の点Tに注目して下さい。
この点から、電流Ist は流出しています。電流It も流出してます。
流入する電流が無い! <==ナンジャコリャ??何だこの点は?無限に電流が湧き出る泉か?
疑問は果てしなく続きますが、この疑問は次のように解釈して解決します。
Tでキルヒホッフの電流則を立てます。
流入する電流をプラス値、流出電流をマイナス値とします。
Σ流入する電流-Σ流出する電流=0 <==電流則のまんま
0-IstIt=0
Ist=-It
つまりIstIt を180度反転した電流となります。 <==もの凄く重要!V結線の要です。
この部分のみのベクトル図を描いて見ましょう。

この様なベクトル図になります。
次項に全部のベクトル図を書いたものを掲載します。

電圧ベクトルは6本描けます。
電流ベクトルは4本です。(回路図は5本であるが、1本は共通なので、4本になる。)
力率角が何処に現れて、巻線に流れる電流と巻線の電圧との位相差がどうなっているのかをヨーク見て下さい。

若干の補足をします。
S●点の電流の出入りに関するものです。(R●点、T●点は既に解説済みです。)
S●点でキルヒホッフの電流則を立てます。
Σ流入する電流+Σ流出する電流=0
Ist-Irs-Is=0
(30[A]∠-90)-(30[A]∠-30)-(30[A]∠-150)=0
0-J30-(15√3-J15)-(-15√3-J15)=0
0-J30-15√3+J15+15√3+J15=0
0=0
となります。矛盾はありません。

整理の意味で次項に練習問題を記載します。
解いて下さい。

練習問題
下記回路の電圧及び電流ベクトルを描きなさい。
(負荷の容量と力率が変わっただけです。)

解答
手順を追って描いて行きます。

その1
電圧ベクトルを記載します。全部で6本描けます。

その2
線電流を描きます。線電流を計算しましょう。
容量が kW 値で与えられていますので、kVA 値変換します。
kVA 値=kW 値÷力率=12[kW]÷0.8=15[kVA]
従って、線電流の A 値=15000[VA]÷200[V]÷√3=43.3[A]
力率角が-36.9 度と解っていますので、各線電流は下記になります。
Ir=43.3∠-36.9
Is=43.3∠-156.9
It=43.3∠-276.9
これを、図29に加筆します。次項参照。

その3
電流ベクトルの最後の1本、Ist を描きます。
It を 180 度反転させて記載すればOKです。

これでベクトル図は出来上がりです。これで一応の説明は終わりです。
次項にV結線の注目すべき点を記載します。

【進みバンク、遅れバンクの話】

下図はVrs、Irs、Vst、Ist のみを抽出したものです。

この図から解るとおり、各巻線に流れる電流は、巻線電圧に対して、位相差が両極端になります。
Irs はVrs に対して極端な遅れとなり、Ist はVst に対して位相差が殆ど無くなります。
この様に、位相差が大きく異なりますが、それぞれのバンクを「進みバンク」「遅れバンク」と言います。

巻線RS側は極端に遅れになりますので、「遅れバンク」と言いそうですが、言いません。
RSバンクは「進みバンク」、STバンクは「遅れバンク」と言います。
これはRSバンクの電圧VrsがSTバンクのVstに対して120度進んでいる為にこういう言い方をします。
間違いやすいので注意して下さい。

トランスの利用率の話

トランスの容量の単位は一般的に[VA]ですが、V結線は変則な結線の為に、無理をしている所があります。
この無理をしているヶ所が、利用率に表れます。

上図はデルタ巻線の回路を描いたものです。
このトランスに負荷は幾つまで接続出来るか考えてみましょう。
トランス容量が3S[VA]だと言っているので、3S[VA]使えなかったらインチキになります。
トランスの定格電流(流し得る最大電流)をI[A]とした場合、線電流はこの電流の√3 倍になります。
従って、接続出来る最大負荷は
負荷容量[VA]=√3×線間電圧[V]×線電流[A] <==公式のまんま
=√3×V[V]×√3I[A]
=3×V[V]×I[A]
=3S[VA]
となりますので、無事3S[VA]の容量を接続出来ます。 <==当たり前の話
ではV結線の場合はどうなるのでしょうか?

図34から1バンク撤去しました。
トランス容量は2S[VA]になります。 <==当たり前の話
V結線の場合、巻き線電流と線電流の大きさは等しくなります。(線電流を√3倍に出来ない。)
従って接続可能な容量は下記になります。
負荷容量[VA]=√3×線間電圧[V]×線電流[A] <==公式のまんま
=√3×V[V]×I[A]
=√3S[VA] <==2S[VA]より小さい値になる。
トランス容量は2S[VA]ですが、接続可能な負荷容量は√3S[VA]です。
2S[VA]の容量を接続出来ません。
従って、この場合のトランスの利用率は
利用率=接続可能な負荷容量/トランス合計容量
=√3S[VA]/2S[VA]
=86.6[%] <==100[%]にならない。
となります。
逆算をすると、負荷容量がD[kVA]の場合、V結線の容量は 1.155D[kVA]=0.578D[kVA]×2バンク以上が必要
です。

V結線の裏技話

前項ではトランスの利用率の話をしましたが、此処ではこの利用率を改善する方法を書きます。
非常にマニアックな方法です。
普通はこんな事をやりませんがこんな手法もあると言うことを覚えておいて下さい。

上図は何度も描いたV結線の基本図です。
話に現実味を持たせるために容量を大きくしています。
この回路の必要トランス容量を計算してみましょう。
1バンクで必要トランス容量=200[V]×300[A]=60[kVA]となります。
STバンク(遅れバンク)に流れる電流は巻線電圧に対して位相差が無い電流です。
従って、これ以上どうにもなりません。
RSバンク(進みバンク)には 60 度の位相差を持った電流が流れます。
これを何とかイジクリマワシテ何か出来ないか?を考えます。
ソウダ!!コンデンサを接続してみよう!!

コンデンサを付けてみました。

図37は電圧ベクトルVrs を基準ベクトルとして新たに描いたものです。
図38に示した様にIrs を実数分と虚数分に分解します。
虚数分の電流を打ち消す事が出来る電流をコンデンサで作ってやれば、電流値を減らすことが出来ます。

図38で示した通り、J259.8[A]を流すコンデンサを付ければ良いことになります。
このコンデンサの容量を計算します。
コンデンサ容量[var]=J259.8[A]×200[V]=J51.96[kvar]となります。
この時にトランスに流れる電流は
トランス巻線電流=線電流+コンデンサ電流
        =150-J259.8+J259.8
        =150[A]

従って、必要なトランスバンク容量は
バンク容量(進みバンク側)=200[V]×150[A]=30[kVA]
となりますので、元の容量 60[kVA]の半分に出来る事になります。 <==本当!

お勧め度やらない方が良いと思います。お勧め出来ません。
負荷を計算上 90[kW]で一定としましたが、実際の負荷は一定にはなりません。
負荷が停止しているときは、トランスから見た負荷はコンデンサだけになります。
コンデンサ容量は 51.96[kvar]でトランス容量は 30[kVA]ですから、√3 倍の過負荷になります。
これではトランスがパンクします。

又、コンデンサ電流だけになった場合、フェランチ効果により電圧が上昇します。
ですから、やらない方が良いと思います。

詳細説明 ※1 力率角は何処に現れるか?

下図は図10をそのまま記載したものです。

この図を下記のように書き換えます。

ご覧の通り、単相回路×3セットに分解しました。
資料図1の電流を計算してみます。
|Irs|=容量[kW]÷力率÷線間電圧(UN間の電圧)×1000
   =3000÷0.866÷115
   =30.00[A]

この値は図10の電流値と同じです。力率角も同じです。
つまり、資料図1~図3の電流は図10の電流と全く同じ電流です。
又、資料図1~図3の負荷を合算すると、図10の負荷と同じになります。
N線に流れる3つの電流を総て合算するとゼロになります。

この3つの回路図を合算して元に戻す場合。N線は撤去出来ます。(N線は無くても良い。)
ですから、線電流は、相電圧に対して力率角を伴って流れると言えます。
三相は単相×3セットと言うのはこういう事を指します。

今度はデルタの場合です。

この図を下記のように分解します。

この図をさらに下記のように分解します。上の図をバラバラにしただけです。

各電流が解りましたので、今度はコレを合成します。

無事元のIr と今回のIr は同じものになりました。
同様に、V●点、W●点で計算を行えば、Is、It の計算が出来ます。
この様に解析すれば、デルタの場合も、どの電圧に対して電流が力率角を持つのか理解出来ると思います。

このやり方は、本来配線が3本のところを無理矢理6本にバラして計算し、最後に又3本にまとめると言うやり方ですから、面倒くさいやり方です。

ですから電源がデルタの場合でも、仮想のスター結線を定義して計算した方が楽です。
どちらが解りやすいかは人それぞれですから、好みに応じて計算すれば良いと思います。

注記
archtan は角度を求める関数です。
tanθ=αとすると、θ=archtanα の関係があります。
archtan を tan-1 と書くこともあります。

詳細説明 ※2 デルタ電源の電流計算

この式は「Irs はIr に対して、大きさが 1/√3 倍で、位相が 30 度進む。」ことを示しています。

三相交流は120度の位相差を持つ値で示されますので、このベクトルオペレータを使って表現すると、表記が簡単になります。
前ページ図13の電源に流れる電流を下記のように書くことも出来ます。
Ist=αIrs <==Irs とIst は大きさが同じで、位相差が 120 度ある。
Itr=α2Irs <==Irs とItr は大きさが同じで、位相差が 240 度ある。

雑感
小生が20歳代の頃、V結線の解説書を読みましたが全く理解出来ませんでした。
又、低圧単相コンデンサを用いてトランスの利用率を上げ、契約電力を下げる手法などもありました。
当時は、電力会社との契約はトランス容量で行っていましたので、トランス容量を下げるのは契約電力を下げる有効な手法だったのです。(今はこんな馬鹿げた事はありません。)

全く理解出来ないので、こんなものは一生理解出来ないだろうと思っていました。
そして今、こうやって人様に向かって解説書を書いています。
実に不思議な気持ちです。

V結線の話【PDF版】