電験(2種か3種)とエネルギー管理士の同時受験は、まぎれもなく効率がよいと言えるのですが、安易に取り組むのはあまりおすすめではありません。時代が変わり昔と状況が違ってきているので、この判断を考察してみます。
「電験」と「エネルギー管理士」の同時受験が話題になるのはなぜか
電験とエネルギー管理士の同時受験をする方は多くいらっしゃると思います。私も「エネルギー管理士」と「電験2種」を同時受験しました。結果は、同じ年に合格でした。(何年もかかりましたが)
エネルギー管理士(電気)と電験を同時に受験する理由は次のメリットがあるからだと考えています。
エネルギー管理士は電験2.5種とも言われていたので、管理人は、電験3種の次のステップととらえ電験2種の時に同時受験しました。理由は上記メリットがあるためです。
なお、出題範囲は次のような重複をしています。電験を勉強していれば自然にエネ管の範囲は網羅できるようなイメージです。
<エネルギー管理士試験と電気主任技術者試験の出題範囲>
・エネルギー管理士課目Ⅱ(電気の基礎)
電験では・・・理論科目の内容+機械科目の自動制御
・エネルギー管理士課目Ⅲ(電気設備及び機器)
電験では・・・電力科目の一部および機械科目の一部
・エネルギー管理士課目Ⅳ(電力応用)
電験では・・・機械科目の一部(電動力応用・照明・電気加熱・電気化学)
※エネルギー管理士のみの範囲:空調調和
・エネルギー管理士課目Ⅰ(エネルギー総合管理および法規)
電験では・・・法規に該当するが、法律が異なる。
電験3種の方が幅広く、エネルギー管理士の方が深いです。
エネルギー管理士と電験3種、2種の難易度の比較
エネルギー管理士(電気)のレベルは、私の結論では、
エネルギー管理士と電験3種の問題レベルはほぼ同じ
(エネ管が若干レベル高め)
と結論づけています。電験2.5種は妥当かもしれません。
どちらかというと、2.2種くらいです。
理由は次の記事にまとめています。
電験2種とはレベルが全然違い比較にはなりません。細かく言えば、電験2種1次試験と近いレベルにあります。電験2種の1次試験は単なる足切り試験であり、電験3種の内容をほぼ網羅できていれば80%は合格できると思います。そのくらいのレベル感だと思います。
電験3種よりレベルが高いと言われているエネルギー管理士でも、電験3種と同程度のレベルなので同時受験は可能だと言える。
エネルギー管理士(電気)と電験3種の合格率の違い
受験者数と合格率の比較をします。受験者数は10倍程度違います。合格率はエネ管の方がずいぶん高めですが、受験者層が異なると思いますので一概に比較はできません。
- エネルギー管理士(電気):4,000人程度受験 20~30%程度
- 電験3種:60,000人程度 10~15%程度
安易な比較はできませんが、上位資格と言われるエネルギー管理士の方がい合格率が高めです。
合格率から見ても必ずしも電験3種のレベルがエネルギー管理士の上位とは言い難い状況と判断できます。
試験制度の比較からの考察
どちらの試験も次の2点は共通です。
試験の実施時期や方法について、令和5年度の実績にて比較します。電験3種はかつてはエネルギー管理士と同じ年1回の筆記方式でしたが、令和5年度からは年2回のCBTも選択できるように見直しされました。
試験 | 実施時期 | 解答 | 区分 |
---|---|---|---|
エネルギー管理士 | 令和5年7月30日 | 択一式 | 筆記方式 (マークシート) |
電験3種 | 令和5年8月20日 令和6年3月24日 | 択一式 | 筆記方式 (マークシート) |
電験3種 | 令和5年7月6日 ~7月30日 令和6年2月1日 ~2月25日 | 択一式 | CBT方式 |
夏季についてのみスケジュールが重複し同時受験しやすい状況になったと言えます。
同時受験におすすめできない人
前置きが長くなりましたが、本題です。
同時受験は、相互の学習に相乗効果があり、まぎれもなく効率はよいですが、1つだけ伝えたいことがあります。
真面目に勉強すると、同時受験は結構大変。
電験とエネ管は近いレベルですが、どちらもレベルが高いです。
私のように年中試験受けていて、長時間の勉強を連続耐久可能であればよいのですが多くの人はそれが難しく、片方の勉強だけでも大変なことが多いです。
数年に1回、電験3種の講師を頼まれることがあったり、会社に人に電験3種を教えることもありますが毎回勉強します。1種受かっていてもいきなり解ける問題は少ないです。そのくらい電験3種の難易度は高いのです。
エネルギー管理士は受験料が高く、2~3年同時受験を続けると毎年2万円以上かかります。それに加えて過去問を購入する必要があります。
お金がかかりどっちつかずの勉強をして両方落とすようなことになると取返しがつきません。
そこで、私の1つの考えです。
電験3種がとにかく必要な人は、電験3種に集中した方がよい。
(資格がとにかく欲しい人)
最近(記事を書いた令和6年現在)の電験3種は、有資格者の減少に伴い易化(とりやすくしている)の傾向があります。年2回の受験やCBT方式の採用、過去問の使いまわしが起きています。たぶんしばらくの間は8割くらい過去問と同じ問題が出ます。
こうなってくると、とりあえず電験3種を取りきった方がよいと思います。
(こういうことを書くと有資格者の質の低下を招くのを推奨しているように見えてしまうかもしれないですが)過去問と同じ問題しか出ないのであれば、理屈を丁寧に勉強して様々なパターンの問題に対応できるようなことをしなくても、過去問の問題の解き方を覚えちゃった方が早いです。(以前はAの出題に対してBやCのパターンも勉強していたが、今はある意味Aだけでよい)
取ってから必要なところを勉強して自分のレベルを上げればよいのです。
電験3種の過去問を1問でも多く解き、過去問の引き出しを多くすれば合格してしまうのが今の電験3種です。ここに余分にエネ管を詰め込むのは得策ではないと感じます。
エネ管と電験は視点(目的)が違うので、当然過去問の傾向は違う。
エネ管は過去問と同じではないのでそれなりに真面目に勉強する必要があります。こうなるとおそらく中途半端になります。
とにかく電験3種が欲しい人は、次のとおりです。
結論1:電験3種がとにかく必要な人は、電験3種に集中した方がよい。
同時受験におすすめできる人
上記の結論1に対して、同時受験をおすすめできる人は次の人です。
将来を見据え、じっくり勉強したい人。
資格取得は慌ててない人。(2~3年かかってよい)
2~3年計画でじっくり勉強し、知識を自分の中にしっかり蓄積しながら資格取得に取り組みたい方には同時受験をぜひやっていただきたいです。
将来的に電験2種、1種とステップアップしたい、たちまち電験3種の取得を急いでいない場合には、過去問丸覚えのようなやり方ではなく、いわゆる昔の時代のような学習スタイルがよいと思います。
試験範囲の重複する2つの試験に対して丁寧に進めることで、互いの学習に相乗効果もうまれます。学習時間に無駄がなくなり、時間が有効に使えます。
このやり方は短期間で全科目を網羅できようもなく当然時間がかかります。
一方でベースをしっかりと作り将来に活かすことができます。
こうした考え方であれば、2つの試験を同時に受けるメリット(学習範囲が重複している、受験時期が同じ)を最大限活かすことができますし、出題傾向が違うというデメリットも特に問題ありません。むしろ臨むところかもしれません。
問題使いまわしの無かった頃は、基本的に同時受験がおすすめと言えた時代。
資格取得を急がずじっくりと将来を見据える方は、次のとおりです。
結論2ー1:2~3年計画でじっくりと実力を付けたい場合には、電験3種とエネルギー管理士の同時受験をおすすめする。
結論2-2:電験2種・1種はじっくりと受験勉強するしかない試験のため、電験2種・1種とエネルギー管理士の同時受験は効率が良くおすすめします。
エネルギー管理士の取り組み方については次の記事にまとめてあります
同時受験におすすめできない人(番外編)
ここまでの2つは、明確な目的のある方に向けた記事ですが、もう1つ番外編です。
漠然と2つとれちゃうかもしれないと思っている方はおすすめしない。
1つめのおすすめできない人篇に書いた理由に近いです。資格取得を急ぐわけではないがとりあえず両方受けてみよう、両方受かるかもしれない、という感覚だとおすすめしません。
前述しましたが、どちらもレベルが高いです。電験3種は過去問使いまわしで簡単になっていると書きましたがけっこう難しいです。
同時受験真面目に取り組むのはしんどいです。
(2か月程度毎日何時間も机に向かう覚悟が必要)
なんとなくな中途半端な動機だと範囲が広くて大変になってしまい、途中辞めになってしまう可能性があります。こうなる恐れのある方はとてももったいないのでおすすめしません。どちらかに注力した方がよいです。
結論3:なんとなく2つ同時にやった方が効率よいかと思っている人には同時受験はおすすめしない。
まとめ
3つの結論を書きました。再掲します。
どれに当てはまるか、腑に落ちるものを選んでいただけるとよいかと思います。3番目については失礼な書きぶりなのですが、案外これに陥って時間とお金を無駄にした、とならない方がよいかと思います(笑)
最近の情勢を見ると、電験3種未取得の方はとりあえず電験3種とっちゃった方がよいと思います。有資格者の需要も圧倒的に電験3種だと思います。
その他のご意見や考察・感想などあればコメントいただけるとうれしいです。
別の着眼点ですが、熱分野と電気分野のどちらを選ぶべきかについてまとめましたので関連記事として紹介します。
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