複素数とは(ベクトルと極座標表示)

電気計算に用いる複素数表示とは何を表すのか、どのような値でベクトル上の表現をするとどうなるのか、さらに計算を楽にできる極座標表示とは。

複素数とベクトルの話

今回のお代は複素数とベクトルの話です。
純粋に数学の話ですから面白くも何とも有りませんが知っていれば得をする話だと思います。

平成鹿年 骨月 吉日
ダサイタマ・ドズニランド大学・学長鹿の骨記

問題 これは何?

普通の人はこう答えます。
「長い横の線と短い縦の線。+と-は意味がワカラン。」
数学者はこう答えます。
「これは数直線でアール。」
と言う事で、我々は普通の人だからこれでオシマイ!・・じゃ無くてイヤイヤ数学者に付き合う事にします。

更に問題
足すと 20 になり掛けると 40 になる2つの数をこの数直線上にプロットしなさい。
言われた通りに方程式を立てると次のように書けます。

x+y=20 --- ①
xy=40 --- ②

この方程式を解くと下記の答えが出ます。
x=17.746 y=2.254 途中計算は省略します。
これをプロットしろと言うのだから結果は下記になります。(精度はかなりいい加減・・・)

此処で重要な事は、この方程式の根の値が「数直線」の上にプロットされる事に依り「数字が見える。」という事です。この様な「数字の視覚化」は数を理解する上で非常に重要です。

では次の問題を解いて下さい。足すと 10 になり掛けると 40 になる2つの数をこの数直線上にプロットしなさい。上の問題と非常ににた問題ですが数字が変わっただけです。

取り敢えず方程式を立てると次のようになります。

x+y=10 --- ①
xy=40 --- ②

②式を変形し①式に代入すると次の式になります。
x2-10x+40=0
この式を解くと次のようになります。

ナンジャコリャ!?と言う計算結果になります。√の中が負値です。こんな数字は世の中にはありません。と言う事でこの式は解けない方程式!と相成ります。

普通の人は此処で諦めますが、数学者という人種は諦めないで次に進みます。

数学者という生き物は奇特な生き物で苦し紛れに次のような事を言い出します。

j=√-1 と言う数字を考える。

1 と言う数字を考える。

何を突然言い出すのか?と思いますが数学者がそう言うのだから付き合ってみましょう。仮に「j=√-1」と置けば解けなかった方程式の根は次のように書けます。

√15≒3.873 ですからこの式はx=5±j3.873 と書けますが、これ以上計算は進みません。
(数学的にはx=5±3.873iと書くのが正規ですが、此処では電気屋の流儀で行きます。)
(この数字はa+jbと一般式で書けますが、これを複素数と言います。)

だから何やねん!?となりますが、勿論この2つの数字は足せば 10 になり掛ければ 40 になる数字です。設問は「この数字を数直線上にプロットして数字が見えるようにしなさい。」と言っていますが、プロットは勿論出来ません。

この様な数字「j」を虚数(キョスウ)と言います。

ヤッパリ駄目ジャン!では無くて数学者は更に次の事を考える訳です。
もうエライというかアホと言うか・・・ですが次のように考えます。
「数直線があるなら数平面が有っても良いじゃ内科医!」
「数平面」って何ね?と我々凡人は思う訳ですが、次のような事を指すのだそうです。

数学者ガウスが考えたものだそうですが、素人の我々にとっては「はぁそうですか。」としか言いようがありません。この数平面は横軸は数直線と同じで実数を表すものですが、縦軸は虚数軸と言って虚数を表すものです。虚数は実数ではありませんので、実数軸上に配置出来ないのは当たり前なのですが、と言って何処かへ放り投げる訳にもいきません。苦肉の策がこの平面で表すと言う手法です。これを使って例の方程式の根をプロットすると下図になります。

図4に示したように虚数を視覚化する事は非常に重要です。二乗すると-1 になるというつかみ所の無い数字をこの様に見える形で考える事は重要な事です。

次に考えるのは図5に示すものです。

ベクトルは「方向」と「長さ(大きさ等でも良い)」を持った概念ですが、これを表す手段として「ガウス平面」を使おうと言うのです。

これも理解しやすいものと思います。
引き算は 180 度反転したベクトルの足し算です。
今度は掛け算です。まずはベクトルに実数を掛けた場合です。

今度は虚数を掛けます。まずは「j」だけを掛けてみましょう。

この事に何の意味があるのかは今は問いません。此処では j を掛け算するとベクトルが反時計回りに 90 度回る事だけ理解して下さい。

今度はベクトル同士の掛け算です。図7ではベクトルの足し算を書きましたが掛け算をしたらどうなるかを考えます。

同様に割り算もやってみましょう。

ベクトルが余りにも大きくなりすぎるので半分に縮小して書きます。

取り敢えずこれでベクトルの四則演算、つまり、足し算、引き算、掛け算、割り算の説明はしました。
実はこれで話は終わりません。次の話がありますのでもう少しお付き合い下さい。

今度は次のような問題を考えます。 (極座標と言う概念の導入。)

こうやって考えます。

次に問題になるのが、このBを a+jb の形式で書くと、どの様な値になるのか?と言う事ですが、下図に示すように計算します。(三角関数を使います。)

この様に極座標を使うとベクトルを簡単に回転する事が出来ます。更にこの極座標はもっと便利な機能が有ります。便利だからこんな事を色々やります。

今度はこういうベクトルを考えます。

つまり、ベクトルの掛け算においてベクトルを極座標で表した時はベクトルの絶対値はお互いの絶対値の積で計算され、角度はお互いの角度の和で計算される事になります。

計算結果を見ると解りますが、掛け算の計算は極座標の方が計算が楽です。

この様に掛け算の時は極座標の計算が圧倒的に楽です。
次は「割り算」です。
回りくどい説明は止めて一気に一般式での証明と説明を行います。

この様に割り算の場合も掛け算の場合と同様に「絶対値は割り算」で「角度は引き算」を計算すれば良い事が解ります。図16の計算をこの手法でやって見ましょう。

となりますので同じ結果が得られます。

-*- まとめ -*-

  • 解けない二次方程式の根を虚数「j」を使って解く事を考えた。
    数字のa+jbはこれ以上計算出来ない数字で、これを複素数と言う。
  • 複素数がどの様なものか良く解らないのでガウスが複素数を「数の平面」で表現する事を考えついた。これをガウス平面と言う。
  • 平面上に点を定義出来る事を利用してこのガウス平面でベクトルを表現する事にした。
    複素数を使って計算をする事になるが、これでベクトルの四則演算をする事が出来るようになった。足し算や引き算は勿論の事、掛け算や割り算も出来るようになった。
  • しかし、掛け算や割り算とベクトルを回転させる事に考えると複素数を使ったやり方は余り良い方法では無かった。計算がメンドクサイ!
  • そこで「極座標」と言うベクトルを表す別の方法を考えた。これはベクトルを「絶対値∠角度」で表す方法であるが、これを使うと掛け算と割り算が圧倒的に楽になる事が解った。

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この様にしてベクトルの計算は行います。この数学的な基本を利用して電気工学は出来ています。電気工学上のベクトルの話は別の機会で・・・

オシマイ

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