ブロンデルの定理とは 2電力計法(2個の計器で3相電力測定)

電気理論

 三相電力は電力量計2台を用いて、その和から求めることができる「ブロンデルの定理」があります。この方法は2電力計法と言われています。

ブロンデルの定理

 今回のお題は「ブロンデルの定理」です。毎回の事ですがこれを知っていると何か良いことが有るわけでも無くこの解説を見ても理解できない場合は多々あります。まぁ無いよりマシ程度でお読み下さい。

平成鹿年骨月吉日
サイタマドズニーランド大学 学長 鹿の骨 記

早速ですが下記の回路をご覧下さい。

言いにくい事ですが、これで理解できる人って相当に頭が良いと思います。
当方などはこの図を見ただけでめまいがします。
電源の相順が何かヘンですし、電力計内の2つのコイルが何を指しているのか全く解りません。
線間電圧の取り方も理解不能です。

そういう方の為に解説書を作りました。

単相電力計を2つもってくれば三相電力が計測出来るというブロンデルの定理の話です。
次ページ以降に怪しげな解説があります。お時間が有ればお読み下さい。

図1の様な回路を考えます。

各計器の指示値は下記になります。
V=100V W=8,000W var=6,000var A=100A
この図は一相分の計器を書いていますが、残り二相に同じ計器を設置しても値は同じ値を指します。
三相の有効電力と無効電力はこの値の三倍値をとれば良いことになります。
有効電力=8,000W×3=24,000W=24kW 無効電力=6,000var×3=18,000var=18kvar
線電流は各々 Ir=100A∠-36.9度 Is=100A∠-156.9度 It=100A∠-276.9度 となります。
此処までは当たり前の話ですが、念の為にベクトル図を示します。

図5は電力のベクトル図です。
R相のベクトル図を示しますが、S相もT相も同じものになります。
三相分はこの図を単純に3倍したものになります。図は略。

今度は図6の様な回路を考えます。
電圧要素を取るのにR~N端子では無くR~S端子に繋ぎ替えたらどうなるかという話です。
つまり相電圧では無くて線間電圧に繋ぎ替えたら何がどうなるか?と言うことです。

順番で書いていきます。
先ずは電圧計ですがこれは相電圧から線間電圧に変わりますのでV=173Vになります。
有効電力計は下記のベクトル図を見ないとワケワカメです。

有効電力を計算すると
W=100V×√3×100A×COS-66.9=100V×√3×100A×0.39233≒6796W=6.796kW
皮相電力は VA=100V×√3×100A≒17.32kVA
無効電力は
var=100V×√3×100A×SIN-66.9=100V×√3×100A×(-0.91982)≒15932var=15.932kvar
電流の値は変わらず A=100A です。
有効電力計と無効電力計の指示値がやっぱりワケワカメです。
見てもわからんぞ!

ここでさらに追い打ちをかけるように次に行きます。

今度は図8の様な回路を考えます。
電圧要素を取るのにT~S端子に繋ぎ替えたらどうなるかという話です。
線間電圧を取るのにVstでは無くてVtsで取っています。

ベクトル図を整理して書くと下図になります。力率角をθとして遅れの場合で書いています。
θは負値になることに注意して下さい。(図はθ=-36.9度で書いています。)

図がかなりゴチャですが、注意深く見ればそんなに複雑なものではありません。
赤いベクトルは相電圧、青のベクトルは線電流、緑のベクトルは計測に使用する線間電圧 を示します。

相電圧を基準にした電力の計算を行います。

2電力計側の計算をします。

となりますので相電圧を元にした計算と同じ結果が得られる事が解ります。
この計量方法は電力計の節約になるのですが万能ではありません。
不具合のある場合を記載します。
その1;極端に力率が悪い場合の支障(遅れの場合)θ=-60度を超える場合など。

図11を見ると解りますが、見かけの力率角の絶対値が90度を超えますので有効電力計の値が負値を指します。
一般的に有効電力計は正値のみを指すように作られていますのでこの場合は正規の値を指せません。
こういう場合はCTの極性を逆にするか電圧端子を逆極性で繋ぐかして指示値を負値として計上します。

図12はRS間に負荷を繋いだ場合の回路図です。ベクトル図を書くと図13の様になります。

此処で負荷の力率とは相電圧E

r に対するものでは無く線間電圧V

さい。力率=100%と言っていますので図13に示すように電圧V
rs に対するものであることを理解して下
rs に対して力率角=0度となります。
各計器の読みは下記のようになります。
V:173V
W:17,300W
var:0var
A:100A

次はST間に負荷がある場合です。

次はTR間に負荷がある場合です。

思いっきりややこしいベクトル図になりますが、TR間に負荷が来ますので力率角はVtrに対しての電流の挟み角になります。ところが計測用の電圧としてVtr は使わずにVrs とVts(Vstでは無いことに注意)を使っています。またIr はIt の180度反転になることを理解して下さい。各計器の値は下記になります。

V1=V2:173V
W1=W2=8,650W(173V×100A×COS60=17,300×0.5)
var1:14,982var 遅れ(173V×100A×sin-60)
var2:14,982var 進み(173V×100A×sin60)
A1=A2:100A

つまり有効電力は2計測の値が各々半分なので合算値は元の値になり、無効電力は相殺でゼロになります。

ブロンデルの定理【PDF版ダウンロード】

コメント

タイトルとURLをコピーしました