フェランチ効果とは、送電線路(配電線路)に流れる負荷電流が進み電流となったときに、進み電流によって発生する電圧降下が結果的に受電端電圧が送電端電圧を上回る現象をいいます。直感的に分かりづらい現象ですがベクトル図で説明することができます。
このベクトル図の描き方は、送電線の電圧降下のほかに変圧器の電圧変動率や同期機の内部誘導起電力と端子電圧の関係を表す際にも全く同じ描き方で表現でき、応用範囲の広い考え方となるので身に付けましょう。
電圧降下とフェランチ効果の話
皆様こんにちは 鹿の骨です。
夜間に受電電圧が上昇する事があります。原因は高圧需要家の力率改善用コンデンサの入れっぱなしです。夜間負荷が無くなったにも拘わらず力率改善用のコンデンサが接続されていると負荷が進み力率になります。
従って、負荷電流は進み電流になりますが、配電線路のインピーダンスとこの進み電流により電圧降下
が発生し、結果として受電電圧が上昇します。電圧降下で電圧が上昇というまか不思議な現象の説明です。
この書き込みが何かの参考になれば幸いです。
尚、説明に当たり、ベクトル図を理解している事を前提としています。この説明を読んでも理解出来なかった方、ゴメンナサイ、他の参考書をお読み下さい。
平成 鹿年 骨日 吉日
まず、下図のような回路の負荷電流を検討します。
図1の内容を計算式で計算すると下記のようになります。
2つのパターンに分けて計算しますが、何れのパターンも a≧0、b≧0、θ≧0 です。
(その1 遅れ負荷の場合)
電流[A]=電圧[V]÷インピーダンス[Ω]
I(ドット)=Vs(ドット)[V]÷Z(ドット)[Ω]
=Vs(1+j0)÷(a+jb) <== Z(ドット)=a+jbと置いた。
=Vs÷Z∠θ <== Z=√(a2+b2) tanθ=b/a
=(Vs/Z)∠-θ <== 大きさがVs/Zで位相角はθ遅れ。
(その2 進み負荷の場合)
電流[A]=電圧[V]÷インピーダンス[Ω]
I(ドット)=Vs(ドット)[V]÷Z(ドット)[Ω]
=Vs(1+j0)÷(a-jb) <== Z(ドット)=a-jbと置いた。
=Vs÷Z∠-θ <== Z=√(a2+b2) tan-θ=-b/a
=(Vs/Z)∠θ <== 大きさがVs/Zで位相角はθ進み。
計算結果はこの様になるのですが、今度は「電圧降下」という切り口で考えます。
キルヒホップの「電圧則」を立てます。
キルヒホッフの電圧則は2種類立てる事が出来ます。
その1
起電力=Σ電圧降下
その2
起電力-Σ電圧降下=0
その1で考えて図1の遅れ力率の場合の電圧と電流のベクトル図に加筆すると下図A図になります。
その2で考えて図1の遅れ力率の場合の電圧と電流のベクトル図に加筆すると下図B図になります。
何れの場合も正解ですが、A図の様に考えて描くのが普通です。以下、A図の様な描き方で説明します。このベクトル図がピンと来ない方は最後のページをご覧下さい。
今度は進み力率の場合です。Z(ドット)=a-jbです。
A図の様な描き方です。
今度は図1の回路に線路インピーダンスを加えた回路を考えます。
前項のベクトル図をVr(ドット) を基準に書き直すと下記になります。
図6のベクトル図は負荷が遅れ力率の場合でした。今度は進み力率の場合を書いて見ましょう。
これが進み力率の場合のベクトル図です。
ピンクの円はVs の長さを表しています。此処ではVs>Vr つまり送り側の方が受けて側より電圧は高いことになります。
受電端の電圧は送電端より電圧降下に依り低くなる。別に不思議でも何でもありません。
今度はもっと進みの場合を考えてみましょう。
もっと進みですから、電圧と負荷電流の関係は下図のようになります。
この電流に依る電圧降下を図7に準じて書くと下図になります。
何と!!受電端の電圧が送電端より高い事になります。
実にまか不思議な事態になりますが、これはベクトル図の書き間違いではありません。
実際にこの様な事が起きます。 <==本当!!
この様な現象を「フェランチ効果」と言います。
夜間に、自家用需要家受変電設備のコンデンサが入れたままになっていることがよくあります。
負荷は止まっていますので、電力会社側から見ると、コンデンサ及び無負荷のトランスだけの負荷になります。
つまり極端な「進み負荷」になっています。この様な場合、フェランチ効果が起き、受電電圧が上がることになります。この電圧が上がる度合いは、昼間に電圧が下がりやすい場所、つまり電力会社の配電所から遠い場所ほど電圧が上がることになります。
極端に電圧が上がりすぎると面倒な事になります。電力会社は途中に「ステップアップ(昼間)ダウン(夜間)トランス」を設けて電圧を調整しているようです。
この様に進み負荷を接続した場合、フェランチ効果が起きることがあります。しかし、進み負荷になれば即、フェランチ効果が起きるわけではありません。図7がそれを証明しています。
下図の様な場合で、電圧計の値を考えてみましょう。
まずV1 及びV2 の値ですが、これは線路インピーダンスを無視していますから同じ値になります。
(これが解らなかったら、一回病院に行った方が良いと思うぞ。)
V2 は負荷の両端の電圧、V3 は抵抗の両端の電圧、V4 はコイルの両端の電圧です。
V3 及びV4 の事を「分圧(ブンアツと読む)」と言います。
電圧降下のベクトル図とはこの分圧のベクトル値をそれぞれ記載したものです。
二つの図を合わせると次のようになります。
コメント