【第1種電気工事士】合格率と合格基準。60点未満でも合格?

電気工事士【第1種】

 第1種電気工事士試験における過去の合格率と合格基準点を紹介します。学科試験の合格基準点は、毎年60%ですが、過去には何度か得点調整された実績があります。

第1種電気工事士(学科・技能)合格率の推移

 電気技術者試験センターのプレリリース資料を基に合格率を計算した資料を計算します。

平成18年度~令和5年度下期 学科平均合格率:46.6%
平成18年度~令和5年度下期 技能平均合格率:65.5%

学科試験は5割前後、技能試験は6~7割となっています。
一般的な国家試験の中では比較的合格しやすい試験と言えます。
(注)合格率:合格者数/受験者数(受験棄権者数は除いています)
(注)技能試験受験者には学科試験免除者が含まれます。

第2種電気工事士に比べれば、合格率は低く、1種の難易度の高さが合格率にも表れています。

西暦実施年度期別(学科)
受験者
(学科)
合格者
(学科)
合格者
(技能)
受験者
(技能)
合格者
(技能)
合格者
備考
2023令和5年度上期11,9977,11259.3%まだまだまだCBT導入
上期は全員CBT
2023令和5年度33,03520,36161.6%26,14315,83460.6%
2022令和4年度37,24721,68658.2%26,57816,67262.7%
2021令和3年度40,24421,54253.5%25,75117,26067.0%
2020令和2年度30,52015,87652.0%21,16213,55864.1%
2019令和元年度37,61020,35054.1%23,81615,41064.7%
2018平成30年度36,04814,59840.5%19,81512,43462.8%
2017平成29年度38,42718,07647.0%24,18815,36863.5%技能の判定
基準見直し
2016平成28年度39,01319,62750.3%23,67714,60261.7%
2015平成27年度37,80816,15342.7%21,73915,41970.9%
2014平成26年度38,77616,64942.9%19,64511,40458.1%
2013平成25年度36,46014,61940.1%19,91115,08375.8%
2012平成24年度35,08014,92742.6%16,98810,21860.1%
2011平成23年度34,46514,63342.5%20,21517,10484.6%
2010平成22年度36,67015,66542.7%19,90712,52762.9%
2009平成21年度35,92416,19445.1%20,18313,63167.5%
2008平成20年度29,11411,42239.2%16,09610,18863.3%
2007平成19年度26,65811,03441.4%14,2208,13457.2%
2006平成18年度26,42110,96641.5%14,25310,11971.0%
2005平成17年度25,99911,37043.7%14,53910,33371.1%技能問題
事前公表
2004平成16年度26,00910,75641.4%15,76710,62467.4%
2003平成15年度27,24211,35041.7%15,5047,35747.5%
2002平成14年度26,31011,09342.2%17,51710,18858.2%
2001平成13年度25,83811,39844.1%15,5555,34934.4%
2000平成12年度25,61010,78342.1%15,7108,55554.5%
1999平成11年度26,82910,68839.8%15,8837,62148.0%
1998平成10年度24,39010,15241.6%14,9366,46943.3%

学科試験免除者の技能試験合格率

 平成18年度から平成22年度までは学科試験免除者と学科試験合格者に分かれて技能試験が実施されおりその時のデータがあります。

西暦実施年度(学科免除)
受験者
(学科免除)
合格者
(学科免除)
合格率
(学科合格)
受験者
(学科合格)
合格者
(学科合格)
合格率
2010平成22年度4,5703,28171.8%15,3379,24660.3%
2009平成21年度4,4001,94144.1%15,78311,69074.1%
2008平成20年度4,8732,89959.5%11,2237,28964.9%
2007平成19年度3,4492,08760.5%10,7716,04756.1%
2006平成18年度3,5072,50571.4%10,7467,61470.9%
2005平成17年度3,4712,28465.8%11,0688,04972.7%

 予想と逆のデータです。第2種も同じ傾向でした。

学科試験免除者=前回の技能試験不合格者(経験者)+資格等での免除者です。

技能試験経験者が多く含まれる「学科試験免除者」の方が合格率が高くなって然るべきなのですが、なぜか学科試験合格者(ほとんどが技能試験初受験)の方が全体的に合格率が高いです。

これは私も理由の想像がつきません。

が、初めてでも多くの人が合格できるバックデータにはなりました。

平成17年度以降に技能試験の合格率が高くなった訳

 平成17年度以降、技能試験の候補問題が事前公表されるようになりました。これに伴い、技能試験の合格率は一気に上がっています。(平成16年度もなぜか高めですが)候補問題の公表制度が如何に合格率したかよく分かります。

 平成17年度以降も若干試験制度は変更をしていますが、大きく傾向は変わりません。

平成29年度の技能試験の判定基準見直し

 詳しくは後述しますが、平成29年度より技能試験の判定基準が「作品に欠陥がないこと」に見直しされました。従来より厳しい判定基準となりました。2種では全体的にそれまでより5~10%程度合格率が下がったように見えましたが、1種はそれほど影響を受けていないように見えます。

考察

  • 年度による合格率の差はあまりなく、平均的に同程度の難易度の問題になっていることが伺えます。
  • 技術者不足による試験機会の拡大を受けて、令和6年度からは年2回開催となります。これらを受けて受験者数の増加が見込まれますが、過去の動きを見てもこれが極端に合格率に影響することはなさそう。
  • この2~3年は例年5割を下回っていた学科試験の合格率が6割近くになってきている。問題レベルは大きく変わっていないと思われるが、CBT導入の影響か。(過去問分析等ができていませんごめんなさい)

至近の試験制度見直し(受験機会拡大)

 合格率を見る上では、背景(試験制度の変化)も合わせてみることが大切です。大きな見直し2点(技能問題の事前公表や判定基準の変更)は合格率に影響しています。

 至近では「電気工事業界の担い手不足を懸念」している状況にあり、当面は試験合格者を増やすような取り組みが続くものと思います。これは受験機会の拡大を目的としてもので合格率に大きく影響はしていません。が、こうした背景から当面同じようなレベルの試験が続くことは予想できます。

 以下は、「電気保安制度ワーキンググループ 第15回(2024年3月19日開催)」に掲載されていた資料の抜粋です。

引用元:電気保安制度ワーキンググループ 第15回(2024年3月19日開催)電気保安人材等に関する制度の合理化についてP19

合格基準点(学科・技能)

 第1種電気工事士試験の合格基準点は次のとおり公表されています。

引用元:令和6年度第一種電気工事士試験(国家試験)上期受験案内
西暦実施年度期別学科試験技能試験
2024令和6年度上期60点以上まだ
2023令和5年度60点以上欠陥がないこと
2022令和4年度60点以上欠陥がないこと
2021令和3年度午前58点
午後60点以上
欠陥がないこと
2020令和2年度60点以上欠陥がないこと
2019令和元年度60点以上欠陥がないこと
2018平成30年度60点以上欠陥がないこと
2017平成29年度60点以上欠陥がないこと
2016平成28年度60点以上
2015平成27年度58点以上
2014平成26年度60点以上
2013平成25年度60点以上
2012平成24年度58点以上
2011平成23年度56点以上

※2016年度以前の技能試験の合格基準は以下の通り

  • 電気的に致命的な欠陥(A欠陥)及び施工上重大な欠陥(B欠陥)がなく、 施工上軽微な欠陥(C欠陥)箇所数が4以内の場合
  • 電気的に致命的な欠陥(A欠陥)がなく、施工上重大な欠陥(B欠陥)箇所 数が1で、かつ、施工上軽微な欠陥(C欠陥)箇所数が2以内の場合
  • 電気的に致命的な欠陥(A欠陥)がなく、施工上重大な欠陥(B欠陥)箇所 数が2で、かつ、施工上軽微な欠陥(C欠陥)がない場合 を合格基準とすることが決定されました。

学科試験の合格基準点が引き下げられたことがある

 確認できた範囲(平成19年度まで確認)では、過去に5回学科試験の合格基準が変わっています。

58点:令和3年度、平成27年度、平成24年度
56点:平成23年度、平成20年度

第2種電気工事士では明確に1年だけ合格率の低い年に低い合格基準となっていましたが、第1種では同じくらいの合格率でも下がっている時とそうでないときがあります。

引用元:電気技術者試験センタープレリリース資料

今後も学科試験の合格基準点は引き下げられることがある?

 現在はCBT方式も採用されてきているので60%からの変更はしない(できない)のではないかと思われます。

令和5年度下期では「第一種電気工事士試験委員会において決定した合格基準(60点以上)」という表現が残っていますので、毎回検討しているように読み取れます。

【2024年4月4日記載】電気技術者試験センターへ問い合わせたところ、以前は得点調整があったが、今回からは「60点固定(CBT方式・筆記方式ともに)」ということを教えてもらいました。また、調整があった時代は64点などになったこともあったらしい。

電験3種は受験案内に「合格基準点を引き下げることがある旨」記載がありますが、電気工事士の受験案内は「60点」とはっきり書かれています。

引用元:電気技術者試験センタープレリリース資料

技能試験の合格基準について

今の合格基準は、受験案内にあるとおり「作品に欠陥がないこと」です。

平成28年度以前は「電気的に致命的な欠陥(A欠陥)及び施工上重大な欠陥(B欠陥)が○個以内、 施工上軽微な欠陥(C欠陥)箇所数が○個以内の場合」という形で、欠陥に区分がありました。

古い資料はホームページにそういう表現が残って(私の第1種電気工事士の体験記にも出てきます)いれば、このことを指しています。

従来の軽欠陥が撤廃されて、「欠陥が1つでもあれば不合格」になったので、厳しい方向での見直しになっています。

例:レセプタクルへねじ止めで接続する箇所の電線の巻きが、左巻きは軽欠陥でした。現在は「欠陥」と扱われ一発NGになった。

平成29年度以降も第1種電気工事士の場合は明らかな合格率の低下傾向は見られないように思います。第2種では傾向が見られました。さすが第1種受験者ということなのでしょうか。

(平成28年度以前の合格基準)

引用元:電気技術者試験センタープレリリース資料

(令和5年度下期試験)

引用元:電気技術者試験センタープレリリース資料

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