ベクトル図の基本(読み方、対地電圧)

誰も教えてくれないベクトル図の話

皆様こんにちは
今回の「お題」は電圧ベクトルです。
「又、ベクトル図の話かよ!」と言わないで、お時間があればお読み下さい。
尚、この記載は今まで彼方此方に描いてきた内容を整理したものです。

宇宙 元年 鹿月 骨日
さいたまドズニーランド大学 学長 鹿の骨 記

【問題1】
下図は200V級三相トランスの二次側の回路図である。(一次側の結線図は省略。)
次の問題に答えなさい。
問1
Ern(ドット)、Esn(ドット)、Etn(ドット) のベクトル図を描きなさい。
問2
端子R~端子Sの電圧に適当な記号を振り、ベクトル図を描きなさい。
併せて、ST間、TR間の電圧のベクトル図も描きなさい。

別に難しい問題でも何でもありません。
教科書に出てくる「まんま」です。
万が一、これが理解できない方、申し訳ありませんがもう少し勉強してからお読み下さい。

これは間違いか?正解か?・・さぁ~どっちでしょうか?
実は、これも正解です。

通常はこの様な書き方はしませんが、間違いではありません。これを説明します。下記を考えて下さい。ベクトル矢印の頂点と頂点を結ぶベクトルは、どの様になるか?と言う事です。

そもそも「電圧とは何だ?」を考えます。
電圧とは2点間の電位の差である。」が解答です。

この場合はS点を基準にR点を見ている。
すなわち、R点の電位からS点の電位を引き算している。
R点の電位はN点を基準に、121[V]∠0 度で与えられている。
S点は 121「V」∠-120 度である。
Vrs(ドット)=Ern(ドット)-Esn(ドット)
(S点を基準にR点を見るので、R点の電位からS点の電位を引き算する。)
=121[V]∠0-121[V]∠-120
=121(cos0+jsin0)-121(cos-120+jsin-120)
=121+60.5+j104.79
=181.5+j104.79
≒210∠30 度 となる。

図5、図6どちらが正解なのか?
両方とも正解です。
電圧ベクトルの矢印の先端と先端を結ぶ矢印は、二通りの書き方が出来ます。
どちらの方法で描かなければイケナイと言う決まりはありません。
解りやすい方、都合の良い方で描けば良いのです。

この「視点」という概念で「問2の解答 その1」及び「その2」を見ると次ページに示すようになります。

上記2図は、それぞれ正解です。視点をどの様に取るのかは自由です。
△になる電圧ベクトルを書く時は、この様に3つの視点で書きます。2つの視点で書いても良いのですが、もの凄く紛らわしくなりますので、視点を順送りとし、3つ取って書くのが普通です。尚、視点が2点になる場合が無いわけではありません。

これに関しては後の方で書きます。

視点を変えて描いたものを下記に示します。

通常は図10の様に書きますが、図12でも正解なのです。図12で書いてしまうと、相順が逆にならないか?と言う疑問が発生しますが、実は図10と図12の相順は同じです。

下図に証明の為の図を描きます。

この図は、図10、図12のベクトル図をバラバラにし、再配置の後に、全体をぐるっと回したものです。色に対するRSTの符合は違いますが、相順は変わりません。RSTの順番です。どのベクトルがどの位置に来ているかヨーク見て下さい。

つまり、図10と図12は同じものです。<==重要です!

今度は対地電圧の話です。
手始めに下記の問題を考えて下さい。

【問題2】
下図は400V級三相トランスの二次側の回路図である。(一次側の結線図は省略。)
次の問題に答えなさい。
問1
R点、S点、T点の対地電圧は幾つになるか答えなさい。
又、各点の対地電圧のベクトル図を描きなさい。

説明するまでも無いのですが、R点はN点を基準にした電圧です。S点及びT点も基準は同じです。視点が同じN点です。

N点を大地に直接接地していますから、N点の対地電圧は0Vです。従って、各点の対地電圧は電圧値がそのままとなります。此処までは簡単。

問題は△の場合です。

又、対地電圧の問題です。

【問題3】
下図は200V級三相トランスの二次側の回路図である。(一次側の結線図は省略。)
次の問題に答えなさい。
問1
R点、S点、T点の対地電圧は幾つになるか答えなさい。
又、各点の対地電圧のベクトル図を描きなさい。

ナニコレ? と思ったあなた!・・・普通です。
図16のST間の電圧が、図10と比較すると180度反転しています。

一つ一つ整理しましょう。
まずS点ですが、これは直接接地していますから、対地電圧は0Vです。これは直感的に理解できると思います。次に、R点の対地電圧ですが、これは元々R点を見る時にS点を基準にして見ていますから、S点を接地しても考え方は変わりません。

元の電圧のままです。
問題はT点です。

R点から見たT点の電圧は 210[V]∠120 度で元の電圧と変わりません。
しかし、ST間の電圧だけが180度反転しています。

これは次ページに示す考え方で解決します。

結論を先に書きます。
対地電圧を考える時の視点は1つである。

△の電圧を考える時の視点は3つだという説明は既にしました。当たり前の話ですが、対地電圧を考える時の視点は一つでなければイケナイのです。対地電圧は、大地に対する電圧ですから、視点は必ず大地に置きます。

他の点を基準にしたら、対地電圧を定義した事になりません。従って、今回の場合、S点が大地に直接接地されていますから、視点の基準点はS点です。

S点を基準に、ベクトル図を描くと、自動的に前ページ図16になります。ここで、しつこいようですが、下記のようなドツボにはまった場合の脱出方法を記載します。図16のベクトル図をバラバラにして書き直すと下図になります。

これは、3つの視点で書かなければイケナイベクトル図を2つの視点で書いたから、こうなります。
つまり、

3点間の電圧ベクトルを描く時は、視点を3つ取れ
対地電圧を描く時は視点は一つで、電圧ベクトルは2本で終わり

と言う事です。

これでお解り頂けたでしょうか?
こんなヘンテコリンな解説は、どの参考書にも載っていないと思います。しかし、電気の勉強をしていると、誰もが必ず行き当たる疑問だと思います。

これらの疑問無しでご理解されている方は、もの凄くアタマが良いか、理解していないかのどちらかだと思うのは、小生の独断と偏見です。

ここで、非接地系配電の対地電圧に関して記載します。
下図は普通高圧の配線を描いたものです。
図に示すように、普通高圧は「非接地系配電」です。

この図の通りになっていれば、普通高圧線に触れても人は感電しないハズです。ところが、この線に触れると普通は感電して死にます。

なんで そうなるのかという話です。実は上記の回路は下図の様になっています。

普通高圧の配電線は、電力会社の給電所から結構長い距離で布設します。電柱の一番高いところをに張ってある例の3本の線です。この線と、地球との間にコンデンサが形成されます。(コンデンサが出来てしまいます。)

図21を書き直すと下図になります。

図中R~S間、S~T間、T~R間は各々6600V です。従って、R点、S点、T点はN点を基準として 3811Vになります。つまりR線、S線、T線の対地電圧は 3811Vになります。
ですから、触ると感電します。

今度は低圧200V級の場合を記載します。
下図のように通常はS相をB種接地します。

この図の通り200Vの三相はS端子をB種接地で大地に直接接地しています。普通高圧では「大事故」の状態を、200V級では「故意に」作り出しています。

普通高圧と同様に200V級の配線でも、変圧器に二次側配線にはわずかですが、対地コンデンサがあります。S端子を直接接地していますので、S相のコンデンサは無くなります。

従って下記のような回路図が描けます。

この様に三相200V級の回路には定常的に漏洩電流Ig(ドット) が流れます。変圧器二次側の配線長さ等にも依りますが、100mA 程度が流れるのは普通です。

決して漏電ではありません。

この漏洩電流の計算です。
図25を書き直すと下図になります。

この回路のベクトル図は下記になります。

オシマイ

誰も教えてくれないベクトル図の話【PDF版】

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