第1種電気工事士筆記試験の配線図で必ず出てくる「地絡過電圧装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)」の概要について説明します。どのようなシーンで活用できるのか見ていきます。
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地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)の概要
GR付PASは、地絡継電装置付高圧気中負荷開閉器(Ground Relay付Pole Air Switch)の略称です。
【電工1種】配線図の読み方、配線図問題の記事でも書きましたが、主には6.6kV配電線路との区分開閉器としての役割と、「地絡保護」の役割を担っています。「ZCT・ZPD・DGR」の設備があることから、構内での地絡検出時に負荷開閉器を開放して地絡保護します。
DGR(地絡方向継電器)は、方向判別可能なため、「構内向け」の地絡事故時のみ動作します。
地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)の設置場所・外観
断面図で見て頂くと分かるとおり、一般送配電事業者との責任分界点の直前(引き込み電柱の柱上)に設置されており、6.6kV配電線路との区分(切り分け)開閉器となります。
地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)の役割・用途
第一種電気工事士筆記試験の問題を引用します。この問題解説をすることで役割・用途がとてもよく理解できると思います。
イ(正しい)
一般送配電事業者の配電線への波及事故というのは、下の絵のようなことを言います。このGR付PASが正常動作することで、各需要家構内の地絡事故時には、地絡事故が生じた需要家のみ停電し、他の需要家には影響しないようになっています。これにより波及(関係ないところへ影響させない)事故の防止に効果があると言えます。
ロ:(正しい)
下の絵の高圧負荷BのGR付PASが正常動作すれば、高圧負荷Bのみの停電となるため、一般送配電事業者の配電線へ影響を出すことはありません。
(平常時)
ある配電用変電所から6.6kVの配電線にて送電をしています。変電所にもDGRが付いていて、配電線路の事故監視をしていて、零相電圧や零相電流が継続すると変電所のCBを遮断します。
(高圧負荷Bで地絡事故発生)
高圧負荷B構内で地絡事故が起きました。しかしながら高圧負荷BのGR付PASがなんらかの不具合で動作できませんでした。こうなると、一般送配電事業者の配電用変電所の6.6kV配電線の送電元のDGRが地絡事故検知して動作します。そうすると配電用変電所のCBに遮断指令が出ます。
(高圧負荷B構内地絡に伴う事故波及)
配電用変電所の送電元のCBが切れて、6.6kV配電線全体が停電します。高圧負荷BのGR付PASが正常動作すれば高圧負荷Bだけの停電で済んだものが、動作できないと同一配電線全体が停電して無関係な負荷も影響を受けます。これを事故波及といいます。
ハ:誤り
GR付PASは「短絡保護」はできません。短絡電流を切る能力がないからです。そのため、短絡を検出する継電器も付いていません。(OCRは付いていません。)短絡保護はGR付PASの役割ではありません。
ニ:正しい
短絡保護は「できない」のでとても分かりづらいですが、次のようなケースで役立つことができます。
(高圧負荷Bの構内短絡事故時)
通常は、高圧負荷B構内の短絡事故時は、受電設備に設置してあるOCRで保護すればよいのですが、図のようにOCRより上流側だと保護することができません。その場合、一般送配電事業者の配電用変電所のOCRが動作します。
無事に配電線路が停電して事故はなくなりました。が、このままでは、関係ないところまでずっと停電しておかなければなりません。(高圧負荷Bの構内で短絡したままとなっているのでこのまま送電するとまた事故になって停電する)このため、高圧負荷BのPASを開放します。
最後に、一般送配電事業者配電用変電所のCBを投入することで、事故のない需要家は受電することができます。
まとめ
配線図問題では、一般送配電事業者側の変電所や配電線のことまでは読み取りづらいため、総合的にどのような関連性があるのか分かりづらいと思います。直接問題文には出てきませんが、ここで述べたように、受電設備の上流には一般送配電事業者の変電所があり、受電設備と同じように過電流継電器(OCR)や地絡方向継電器(DGR)が設置されており、需要家内で事故除去できなければその次のステップとして配電線路を停電させるような動きがあることをイメージしておくとよいでしょう。
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