令和5年度実施分から、第1種電気工事士試験および第2種電気工事士試験の「学科試験」においては「CBT方式(Computer Based Testing)が採用され、「筆記方式(=従来の問題用紙配布&マークシート)」と「CBT方式(パソコンで答えを選ぶ)」のいずれかが選択できます。
実施開始された令和5年度にCBT方式を選択した受験者の比率は低いようで、敬遠している方も多くいらっしゃるようです。私なりの考え方をまとめますので、どちらを受けるか決める一助になれば幸いです。最終的にご自身の考えにあったものを選択して頂ければと思います。
管理人のおすすめはCBT方式
「CBT方式」「筆記方式」それぞれに、メリット・デメリットがありますが、天秤にかけた時には「CBT方式」のメリットが勝ると判断しました。その理由や考え方については後に述べます。
私がもし受験するなら「CBT方式」を選択します。
CBT方式と筆記方式どっち?アンケート
令和6年度の「第2種電気工事士」上期学科試験において、「筆記方式」と「CBT方式」のどちらを選択することにしましたか?よければみなさんの選択の理由も教えてください。
本記事を読まれた結果の選択だった場合は、理由もぜひお聞きしたいです。
電気工事士試験(学科試験)CBT受験者の比率
日本人ならば周りの動向が気になる(ならない?)と思いますので、まず過去の実施結果を見てみます。受験者数の比率は電気技術者試験センタープレリリース資料により発表されています。
第2種電気工事士試験
令和5年度は2回ともCBT方式・筆記方式のいずれかから選択が可能でした。
実施年度 | 期別 | 方式 | 実施日 | 受験者数 | 比率 |
---|---|---|---|---|---|
令和6年度 | 上期 | CBT方式 | 令和6年4月22日(月)~5月9日(木) | 10,730人 | 15.3% |
令和6年度 | 上期 | 筆記方式 | 令和6年5月26日(日) | 59,409人 | 84.7% |
令和5年度 | 下期 | CBT方式 | 令和5年9月25日(月)~10月12日(木) | 8,980人 | 14.1% |
令和5年度 | 下期 | 筆記方式 | 令和5年10月29日(日) | 54,631人 | 85.9% |
令和5年度 | 上期 | CBT方式 | 令和5年4月24日(月)~5月11日(木) | 8,221人 | 11.7% |
令和5年度 | 上期 | 筆記方式 | 令和5年5月28日(日) | 62,193人 | 88.3% |
第1種電気工事士試験
令和5年度は年1回でした。令和6年度からは第1種電気工事士試験も年2回実施となります。ただし、令和6年度上期試験は「CBT」方式のみとなります。下期試験は両方の選択が可能です。
実施年度 | 期別 | 方式 | 実施日 | 受験者数 | 比率 |
---|---|---|---|---|---|
令和5年度 | - | CBT方式 | 令和5年8月24日(木)~ 9月10日(日) | 2,788人 | 8.4% |
令和5年度 | - | 筆記方式 | 令和5年10月1日(日) | 30,247人 | 91.6% |
受験者比率のまとめ
まだ始まったばかりの1回の実績ですが、圧倒的に「筆記方式」が選択されています。第2種においては下期試験でもほとんどが筆記方式でした。
ですが、単純に流されないように気を付けてください。まだまだ、様子見の方も多かったと思いますし、多くの方がメリット・デメリットも分かっていなかったはずです。このデータは参考程度に扱っていただければと思います。
CBT方式の特徴
CBT導入の背景は、受験者の利便性向上が目的です。このため、受験者がなるべく受験しやすい制度となっています。
試験日時の選択 | 指定期間内で、予約枠の空きの中から、自由に選択できます。 |
試験会場の選択 | 指定期間内で、試験実施しているCBT会場から、自由に選択できます。 |
日時・会場の変更 | 変更ルールの範囲内で、変更ができます。 |
試験終了と退室 | 試験開始の後は、ご自身のタイミングで試験の終了と退出ができます。 |
解答の正答数 | 試験終了時に正答数が表示されます。マイページからも確認できます。 |
CBT方式の概要
CBT方式はパソコンを使った試験です。席のイメージは次のとおりです。
CBT方式の詳しい内容については次の記事にまとめてあります。
CBT方式のメリット・デメリット
【CBT方式優位】試験日時が自由に選択できる
CBT方式の場合は、受験期間であれば自由に選択可能です。
【令和6年度予定】試験可能期間
1種(上期):39日間 1種(下期):18日間
2種(上期):18日間 1種(下期):18日間
受験期間内の任意な日程・時間帯が選択できる。
まずは令和6年度の試験日程を確認ください。
筆記方式の場合は、「日曜日(しかも固定日)」一択ですが、CBT方式の場合は「平日」が選択できますし、任意の日程が選択可能です。
試験日がすでに仕事等で予定がある場合は受験断念していましたが、受験できるようになります。また、受験日のスケジュールが流動的な場合に対応がしやすいです。試験前に休んで試験勉強日を設けるなど、自分のスケジュールに合わせて日程が組めることが大きなメリットです。
【CBT方式優位】試験会場が選択できる
CBT方式の場合は、全国のたくさんあるCBT試験会場から試験地が選択可能です。
全国(47都道府県) 計 200会場以上 から選択可能
筆記方式であれば各県1つ程度が標準ですが、平均で4倍以上になります。自宅近くを選ぶこともできます。移動のロスも減らすことができます。
【CBT方式優位】試験日・時間・場所は後から変更可能
CBT方式の場合は、いったん決めた試験日・時間・受験地は申込後も変更可能です。
受付期限:予約した試験日の3日前
予約日:4/22 ➡ 4/19 の23:59まで予約の変更が可能
変更後のCBT会場の予約が空いてさえいれば、3日前まで変更が可能です。とてもありがたい制度となります。急遽都合が悪くなったりした場合に対応可能です。
勉強が遅れ「1週間遅らせる」ような使い方もできる
と思います。
【筆記方式優位】問題文へ直接書き込みしづらい
問題用紙が配布されないため、問題文へ直接書き込みしづらい。
問題文はPC画面で確認。メモは配布されたメモ用紙(白紙)を活用。
特に計算問題は使いにくいと思いますが、問題文が配布されないため直接ペンで問題用紙へ書き込みできません。一応、PC画面内にマウスでフリーハンドで書き込みはできるようですが書きにくいと思います。
計算問題の回路図に追記をする場合には、一度メモ用紙に図を書き写して追記するようなことになります。PCの扱いが不慣れな方にとっては大きいマイナス要因だと思います。
ただし、電気工事士試験の計算問題は長い計算が必要な問題はほとんど出題されないので「慣れ」の問題だと思いますので、大きなハンデにはならないと考えられます。
【筆記方式優位】問題の全体が俯瞰しづらい
問題用紙が配布されずすべて画面内で確認するため、頁をめくって全体を見ることがしづらい。
問題文はPC画面内のみ。
後回しにしたり見直したりする際に紙ではないので、見づらくなります。PCの扱いが不慣れな方は多少ストレスを感じる恐れがあります。
【CBT方式優位】マーク塗り間違いは起きない
PC入力のため、マーク塗り間違いが起きない。
受験番号は「ログインID」「パスワード入力」によるログインのため、ログインできたこと自体で受検番号を入れたり間違えたりするような間違いは起きない。また、問題解答も1つしか選択できないので誤って2つマークすることは起きないし、問題に対応する解答欄しか出ないので、問題を間違えて塗ることは起きない。
【CBT方式優位】マーク塗り時間が不要
PC内で解答を選択するため、マークシートへ塗る時間が短縮される
見落としがちですが、マークシートの塗りつぶし時間が短縮されます。解答を直す場合には、丁寧に消す作業も発生されるためもっと短縮されます。きれいに塗るのはそれなりに時間がかかります。マークシートを塗る時間というのは案外バカにできません。
マークを塗るだけでも全体で10分程度は使うと思います。その分筆記方式より優位です。
【CBT方式優位】試験当日、正答数が分かる。
試験終了時点で得点が画面に表示される。
合否の発表は2週間後ですが、得点はすぐに分かり発表まで塗り間違いの心配をする必要はありません。試験後には得点を記載した印刷物ももらえますのでとても安心です。
筆記方式では、合格発表があるまでは自己採点によるしかないので、結果が来るまで塗り間違いの心配をしなくてはなりません。
【筆記方式優位?】出題傾向が分析しやすい
筆記方式は過去問が公表される。
CBT方式は、問題用紙の配布もなく公表もされません。そのため、問題の傾向を予測することしかできず、過去問分析に基づく出題傾向を正確につかむことはできません。
ですが、従来から電気工事士試験は過去問題からの出題比率が高く、出題する問題を予測して対策するような試験ではないので、CBT・筆記方式のいずれでもの過去問をしっかり対策することで受験対策はできるので大きな問題にはなりません。
【CBT方式最大の利点】すぐに技能対策に取り組める
電気工事士試験の本番は「技能試験」です。技能試験は知識と技術が問われます。スピードも必要です。一夜漬けでどうにかなるような試験ではありません。
このため、なるべく早く技能試験の準備に取り組むべきです。
令和6年度の第2種電気工事士(上期)試験日程を図にしてみました。
一目瞭然ですが、CBT方式の方がだいぶ早く取り掛かれます。しかも、試験当日には正解数が表示されるので基本的に発表までの2週間は気にしなくてよいです。
技能試験の取り組む時期については次の記事にまとめています。
将来的にはCBT方式だけになるのでは
電気技術者試験センターの試験では、「電験3種」「第1種電気工事士」「第2種電気工事士」がCBTを採用しています。これからも順次拡大方向だと感じています。
「慣れていないから」CBTを選ばないというのも1つですが、次の試験を視野に入れても将来的にCBTを受験せざるを得ない状況になる可能性があるので今から慣れておくのがよいと思います。
なお、令和6年度 第1種電気工事士の上期試験は初めから「CBT方式」しか選択できません。
まとめ
ここまでの話を整理すると、「CBT方式」がメリットが多いと思います。技能試験の学習期間を長くとれるメリットは絶大です。
問題用紙に書き込みしづらい点が一番のデメリットですが、それを補って余りあるメリットだと思います。上に書いてある内容に違和感を感じられない方は「CBT方式」一択だと思います。
一方で、PCの扱いに不慣れな方にとっては不安もあるでしょうし、PCで受験すること自体がストレスになるようでしたら、ご自身の実力が発揮できないので「筆記方式」がよいと言えます。
このような状況や背景、メリット・デメリットを踏まえてご自身にあった方式を選択ください。
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