変流器(CT)の構造・原理・用途や回路の結線

変成器・継電器

 変流器は、高圧や特別高圧の回路で大電流が主回路に流れる時、その電流を扱いやすい大きさに変換する機械です。この変流器は多くの箇所で様々な用途で使われています。目的によって選定する機器は変わりますし、使い方によって結線が変わります。ここでは、その構造的・電気的な仕組みの解説から、役割や使い方について説明します。

変流器(CT)とは

 電気回路に使用される変流器とは、CT(Current Transformer)ともいい、主回路に流れる大電流を扱い易い大きさに変換する機器を言います。高圧や特別高圧の主回路には容量にもよりますが、例えば数百A(アンペア)~数千Aもの大電流が流れることがあります。その主回路に流れる電流を測定したいという場合に数千Aもの電流を測定できる電流計などありません。もしあったとしても非常に高価なものとなってしまいます。そこで考えられたのが変流器というものです。

変流器(CT)の構造的・電気的な仕組み

 CTの構造・仕組みは変圧器とほぼ同じです。鉄心に巻いた別々のコイルの巻数の比で1次側に流れる電流を2次側に変換(小さくできる)できる仕組みになっています。具体的には下図に示す形となります。

 細かい仕組みは抜きにして、この1次電流と2次電流の比を変流比(=CT比=CTレシオ)といいます。実務では特に仕組みは気にしなくても大丈夫です。この比に従って、2次電流が変換されて出てくる、と考えれば問題ありません。

変流比(=CT比)について

 一般的には、2次電流が5Aで表現されることが多いです。1Aのものもあります。CT比表現は【200/5,400/5,1200/5,3000/5】のように表現されます。

計算例を次に示します。掛け算するだけです。非常に簡単です。

 変換する時に変流比を乗ずるか逆数を乗ずるか迷うかもしれませんが、1200/5なら、1次に1200Aで2次に5A流れると覚えておけば迷いません。

 表を見ると分かりますが、適正な変流比を選定しないと使いたいところで使わない状況になり、CTをうまく使いこなせていないことになります。例えば、普段100Aしか流れないようなところで1200/5を選定すると2次には420mAしか流れません。普段使うところに対して変流比が大きすぎるので、2次側の分解能が悪く誤差が大きくなってしまいます。

 平常時に流れる負荷電流の把握が機器選定には大切です。のちに述べる保護用であれば事故電流の把握が必要です。用途と想定電流によるCT比の選定が大切です。

計器用としての変流器(CT)使用法

 この図は一般的な変電設備の断路器・遮断器・変圧器のみを抜き出した単線結線図です。この変電設備に1000Aの電流が流れているとします。この電流を測定する場合、このままでは電流計を接続することができないため変流器(CT)を接続します。

 仕組みはすでに説明したとおりです。今回のような場合であれば1200/5の変流器を使って電流計を接続します。変流器を用いた場合の電流計に流れる電流は
1000A×5/1200=4.167A
となります。裏を返せばこの回路に接続した電流計の指示値を(1200/5=240)倍すれば主回路に流れる電流が測定できるというわけです。

 これが変流器の設置目的の一つである「計器用」としての使い方です。

保護用としての変流器(CT)使用法

 変流器には、電流を測る以外にもう一つ大きな目的があります。それは保護継電器の設置のためです。その保護継電器のための変流器の設置例を説明します。保護継電器とは分かりやすく言えば、「電気系統に異常(短絡・地絡など)発生時にはその部分を電気系統から切り離すもの」です。

 一般的な継電器に「過電流継電器」というものがあります。一定以上の電流が流れたら動作し遮断器を開放するというものです。

 一定以上の電流が流れる?というのは例えば変圧器の内部短絡事故などの短絡事故を想定しています。短絡電流は通常の負荷電流に比べて大きなもの(数千アンペアなど)が流れるため、この事故電流を保護継電器に入力し事故点を遮断して回路を保護するものです。具体例を次に示します。


短絡電流の計算について(補足)
%Zの7.5%はどこから出てきたか?という質問がありました。変圧器の%Zはその機械の定格事項(始めから決まっている。与えられる数値)です。通常、変圧器のインピーダンスは設計値(目標値)はあるものの、工場で製作されたときに最終的に巻線のインピーダンスを測定し、銘板に記載されます。
%Zは、定格電流が流れた時に定格電圧に対しての電圧降下の割合を指します。ここでは詳しく説明はしませんが、%Zを使えば上に書いてあるような公式で簡単に事故電流が求まります。

 短絡保護は事前に短絡事故電流を計算することと、考えうる平常時の最大負荷電流を求めておき、平常時の状態ではぜったいに動作せず、事故発生時には確実に動作するような値を過電流継電器の動作値として決めておきます。想定した事故電流相当のCT2次電流が継電器に入力されると遮断器へ切指令(開放)を出力して事故箇所(今回であれば変圧器)を切り離します。

実際にはいろいろなところへ様々な仕組みの保護継電器が設置されています。単純な電流だけでなく電圧も入力して動作する保護継電器もあります。ここではごくごく単純で一般的な回路について紹介しました。

 ここでは短絡保護について例示しましたが、地絡保護に特化した「零相変流器」という仕組みもあります。関連記事がありますのでそちらも読んでみてください.

関連で電気工事試験にも出題される変流器の結線についてまとめていますのでこちらもご覧ください。

高圧受電設備のリレー(OCR,DGR)と一般送配電事業者のリレー(OCR,DGR)の記事を少しまとめていますので、よければ参考に見てみてください。

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