エネルギー管理士とは
エネルギー管理士(エネルギーかんりし)は、エネルギー管理士試験に合格またはエネルギー管理認定研修を修了して、エネルギー管理士免状の交付を受けている者のことを言います。
規定量以上のエネルギーを使用する工場にはエネルギー管理者を置く必要があり、業務はエネルギー管理士免状の交付を受けている者を選任しなければならないことになっています。
エネルギー管理士制度の概要
エネルギー資源の乏しい我が国にとって、エネルギーを可能な限り有効に使用することは重要な課題です。このため、昭和54年に「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(通称、「省エネ法」)が制定されるなど、種々の省エネルギー施策が推進されています。以下で紹介するエネルギー管理士制度も省エネルギー法で定められています。
1.規定量以上のエネルギーを使用する工場は、第一種エネルギー管理指定工場に指定されます。このうち製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5業種は、エネルギーの使用量に応じてエネルギー管理士の免状の交付を受けている人のうちから1人ないし4人のエネルギー管理者を選任しなければなりません。(前述5業種以外の業種についてはエネルギー管理員の選任となっています。)
○第一種エネルギー管理指定工場
熱(燃料等)電気を合算した年間使用量が原油換算3000kl以上
2.第一種エネルギー管理指定工場(製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5業種)の事業者は「エネルギー管理士免状」の交付を受けているもののうちから、当該工場のエネルギー消費量に応じ一定人数(1~4名)の「エネルギー管理者」を選任しなければなりません。
エネルギー管理士の職務
エネルギー管理者は、エネルギーの使用の合理化に関して、エネルギーを消費する設備の維持、エネルギーの使用の方法の改善及び監視、その他経済産業省令で定めるエネルギー管理の業務を行います。
また、エネルギー管理者は、その職務を誠実に行わなければならないとの規定があるほか、事業者はエネルギーの使用の合理化に関しエネルギー管理者の意見を尊重しなければならないこと、従業員は、エネルギー管理者の指示に従わなければならないことが規定されています(省エネルギー法第12条)。
エネルギー管理士免状の取得方法
前述したとおり、免状を取得するには「エネルギー管理士国家試験合格」または「エネルギー管理研修修了」の2つの方法があります。
エネルギー管理士国家試験合格による取得
エネルギー管理研修修了による取得
エネルギー管理士国家試験概要
一般財団法人省エネルギーセンターが年1回実施しています。
試験実施時期
毎年7月末~8月上旬頃
試験課目及び出題範囲
試験課目は4課目ありすべてに合格することで試験合格となります。
課目Ⅰは法令問題で「熱分野・電気分野」共通の課目です。
課目Ⅱ~Ⅳはそれぞれの専門分野に応じてどちらかを選択します。どちらに合格しても得られる資格は「エネルギー管理士」で同じものになります。
課目 | 熱分野 | 電気分野 | 区分 |
---|---|---|---|
課目Ⅰ | エネルギー総合管理及び法規 | 必須科目 | |
課目Ⅱ | 熱と流体の流れの基礎 | 電気の基礎 | 専門課目 |
課目Ⅲ | 燃料と燃焼 | 電気設備及び機器 | |
課目Ⅳ | 熱利用設備及びその管理 | 電力応用 |
(注2)*印は、4問題中2問題を選択し、解答します。
(注2)はけっこう大切です。上手に使えると合格しやすいです。「苦手なものをまったく勉強しない」「広く勉強して選択の幅を広げる」どちらでもご自身の状況に合わせて活用ください。
課目合格制度
得点が合格基準に達した課目は「課目合格」となり、課目合格は3年間有効になる制度です。4つの課目すべてに合格すればエネルギー管理士の試験に合格となります。一度課目合格すれば、3年間は合格した課目の試験を免除される制度。
4年で合格した具体例を示します。
試験課目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | ||||
受験状況 | 結果 | 受験状況 | 結果 | 受験状況 | 結果 | 受験状況 | 結果 | |
課目Ⅰ | 受験 | 合格 | 受験免除 | 受験免除 | 受験 | 合格 | ||
課目Ⅱ | 受験 | 不合格 | 受験 | 合格 | 受験免除 | 受験免除 | ||
課目Ⅲ | 受験 | 不合格 | 受験 | 不合格 | 受験 | 合格 | 受験免除 | |
課目Ⅳ | 受験 | 不合格 | 受験 | 不合格 | 受験 | 不合格 | 受験 | 合格 |
・1年目・・・4科目受験で課目Ⅰのみ課目合格
・2年目・・・前年の課目合格で、3科目受験し課目Ⅱのみ課目合格
・3年目・・・前年からの課目合格で、2科目受験し課目Ⅲのみ課目合格
この時点で1年目に合格した課目Ⅰの課目合格は無効になる
・4年目・・・前年からの課目合格で、2科目受験し課目Ⅰ・Ⅳに合格し、試験合格となる
合格基準
各課目とも60%以上です。詳しくは次の記事にまとめています。
合格率
以下の記事にまとめてありますが概ね30%程度の比較的高めの合格率で推移しています。
電卓の使用について
使用可能です。(関数電卓はNG)
電池(太陽電池を含む。)内蔵型電卓で音の発しないもの(四則演算、開平計算、百分率計算、税計算、符号変換、数値メモリ、電源入り切り、リセット及び消去の機能以外の機能を持つものを除く。)に限る。
引用元:省エネルギーセンターホームぺージ「エネルギー管理士試験における電卓の取扱いについて」
メモリー機能は使用可能なので、かならず内蔵タイプを持参してください。
試験の難易度
電験3種をベースとした「問題の難易度」と「受験勉強のし易さ、試験勉強のし易さ」に着目した比較の記事を書いています。
受験するなら「熱分野」と「電気分野」のどっちが有利?
下の記事にまとめています。
旧制度の「熱管理士」「電気管理士」の移行措置
旧制度(平成17年度の省エネ法改正前)での「熱管理士」「電気管理士」の資格は、新制度の「エネルギー管理士」へ一本化されました。新制度では「熱管理士」および「電気管理士」両方の免状の交付を受けている者については、そのまま新制度における「エネルギー管理士」とみなされますので、そのままでも問題ありません。
「熱管理士」または「電気管理士」いずれかの免状のみの交付を受けている者については、現時点(記事記入:2024年2月時点)ではエネルギー管理士国家試験(課目免除あり)を受験し合格しなければ「エネルギー管理士」となれません。
旧制度での資格取得状況 | 移行方法 |
---|---|
熱管理士又は電気管理士のいずれかの免状の交付 を受けている方 ※資格取得の経緯(国家試験・認定研修)は 問いません。 | 国家試験を受験し合格する。 専門区分課目Ⅱ~Ⅳの免除※を受け 課目Ⅰを受験し合格する |
熱管理士及び電気管理士の両方の免状の交付 を受けている方 | 現行制度における「エネルギー管理士」とみなされますので、 国家試験の受験は必要ありません。 |
※平成17年度の改正省エネ法附則第4条に規定する試験課目(専門区分課目Ⅱ~Ⅳ)の免除に期間の制限はない。
私は平成17年度の合格で、旧制度の最後の「電気管理士」を取得しました。取得してすぐに失効した状態です。それから17年経過した令和4年度に課目Ⅰのみ受験し、新制度に対応する「エネルギー管理士」免状を手に入れました。受験料は移行制度の場合、安くなります。
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