誘導電動機には「かご型」と「巻線型」の2種類があります。ここでは「かご型」に分類される誘導電動機の始動方法について紹介します。
かご型と巻線型の構造的な違いは次のとおりで、2次回路(回転子)の電気回路を外部へ引き出しているかどうかが大きな特徴の違いになります。

巻線型の場合は、図のようにスリップリングを介して電気回路を外部に取り出してあるので2次側の抵抗を変えたり、2次側にも電圧をかけるなど電気的な細工ができますが、かご型の場合はできません。
かご形は、外部(2次回路)へ抵抗が繋げない。
2次抵抗不変のため、1次電圧を変える方法が主流。
ここは、かご型の始動方法についての説明となります。
こちらの記事は「鹿の骨」さんにご投稿いただいた貴重な資料です。いつもありがとうございます。
誘導電動機の始動方法の説明

三相誘導電動機の始動方法の説明です。
三相の誘導電動機には色々な始動方法が有ります。
此処では、代表的な次の始動方法を説明します。
1.全電圧始動
2.スターデルタ始動
3.リアクトル始動
4.コンドルファ始動
此処では、かご型誘導電動機の始動方法に関して記述します。
(巻線型では無いと言う意味です。)
全電圧始動
最も一般的に用いられる始動方法です。
他の始動方法は何れの方法も始動時に巻線に印加する電圧が、定格電圧より低い値になりますが、
この方式は定格電圧がそのまま印加されるので、この名前が付きました。(多分?)
因みに、他の方式は「減電圧始動」と呼ばれます。
全電圧始動は、他に、直入れ始動、ラインスタート、LS等と呼ばれます。
下記に始動回路を記載します。

図に示した通り、ON/OFFの制御はピンクで示した、マグネットスイッチのみで行います。
電動機の容量が7.5kW(200V級)以下(程度)の場合に一般的に用いられます。
(長所)
構造が単純。制御盤をコンパクトに作る事が出来る。安い。
始動トルクが大きい。(概ね定格トルクの125%程度。)
(短所)
始動電流が大きい。(一般的に定格電流の6倍で、10秒程度。)
始動時のショックが大きい。(電気的、機械的両方。)
スターデルタ始動 その1
全電圧始動と同様に最も一般的に用いられる始動方法です。
減電圧始動の一種です。
電動機の巻線を始動時にスターに接続し、始動後はデルタに接続します。
オープンスターデルタ始動とクローズドスターデルタの二種類が有ります。
一般的にはオープンスターデルタ始動です。
正式名称はオープン・トランディッション・スターデルタ始動と言う。(らしい。)
下図参照。

始動順序は下記になります。
MC1閉。引き続きMC3閉。MC2は開。これで、スター始動になります。
MC1はそのまま閉。MC3を開。MC2は開。この状態は空転になります。(トルクが急激に少なくなる。)
MC1はそのまま閉。MC2を閉。MC3は開。これでデルタ結線になります。
(長所)
始動電流が全電圧始動の場合と比較すると1/3になる。(定格電流の2倍程度になる。)
マグネットスイッチを3個使用するだけで回路構成が可能。従って、制御盤は正直大きくなるが、比較的コンパクトに作成できる。
(短所)
始動トルクが全電圧始動の場合と比較すると1/3になる。負荷の特性にも依るが、場合によっては始動できない事が有る。(一般的なポンプ、ファン等は全く問題ない。)
途中で空転状態が有るため、トルクに段が出来る。
始動時にショックが有る。しかも2回。
制御盤のMC2とMC3が同時に投入されると短絡になる。
スターデルタ始動 その2
余り一般的では有りませんが、この様な方法も有ります。
オープンスターデルタ始動時のトルクの段付きを解消した始動方法です。
クローズド・トランディッション・スターデルタ始動と言います。
下図参照。

いやぁ~・・・何が何だか訳のワカラン結線図です。
図2と比較すると、マグネットスイッチが1つ増えて、制限抵抗が1セット付いています。
一体これで、何をどうしようと言うのでしょうか?
始動順序は下記になります。
① MC1閉。引き続きMC3閉。MC2は開。MC4は開。これで、スター始動になります。
② MC1はそのまま閉。MC3もそのまま閉。MC4を閉。MC2のみ開。
③ MC1はそのまま閉。MC3を開。MC4はそのまま閉。MC2は開のまま。
④ MC1はそのまま閉。MC3はそのまま開。MC4はそのまま閉。MC2を閉。
⑤ MC1はそのまま閉。MC3はそのまま開。MC4を開。MC2はそのまま閉。
これでデルタ結線になります。
何が何だかサッパリワカラン!
図を書き直して見ましょう。少しは解りやすいかも・・・?
前ページの①は解ると思います。下図の状態です。スター結線になります。

引き続き②の状態の図です。

一見するとワケガワカラン結線ですが、よくよく見ると、この結線は、
巻線コイルと制限抵抗が並列に接続されたスター結線です。
次ページに等価回路を示します。
図5の等価回路です。

引き続き④の状態の図を次に示します。

この時点で、制限抵抗には電流が流れなくなります。
従って、MC4を開放し、⑤の状態に移行します。
下図参照。

最終形を次に整理して示します。
最終形です。デルタ結線になります。

この様にクローズドトランディッションスターデルタ始動は、始動途中で電源が切れる事が有りません。
従って、オープントランディッションと比較すると、トルクの段付きが非常に小さくなります。
段付きが0になれば理想ですが、この方式では出来ません。
突入電流の値ですが・・・・・ワカンナイです。
オープンスターデルタはスターからデルタに切り替わる時に、再度突入電流が流れますが、
この方式ですと、その値を小さく出来ると思います。
何れにせよヨクワカランのが本音です。ハイ。
尚、この方式では制限抵抗が発熱しますので、制御盤の大きさは結構大きくなり、且つ放熱を考慮したものが必要になると思います。
又、制限抵抗の代わりにリアクトルを用いても同じ効果が得られると思いますが、何故か抵抗を使って制御します。
リアクトルを使うと何か不都合でも有るのでしょうか?良く解りません?
リアクトル始動
これも減電圧始動の一種です。
電圧を下げる手段として、リアクトルを使用します。下図参照。

始動手順は下記になります。
① MC2は開のの状態でMC1を閉。
② 始動したら、MC1を閉のまま、MC2を閉。
これで終わりです。
①の状態では、電動機に対してリアクトルが直列に接続されます。
従って、リアクトルに依りこの回路は電圧降下を起こします。
結果として、電動機には定格電圧より低い電圧が印加される事になります。
スターデルタ始動との使い分けですが、多分スターデルタ始動には容量上の上限値が有ると思います。
従って、非常に大きな容量(200V級110kWとか)の場合、スターデルタ回路が組めない事になるのだと思います。(マグネットスイッチの制作限界を超える?)
又、定格電圧が高圧(6kV級又は3kV級)になると、スターデルタでは何か不都合が有るのだ?と思っています。(実物は有るぞ。やったことが無いのでヨクワカラン!)
(長所)
良く解りませんが、大容量のものを起動できる。ではないでしょうか?
又、始動トルクは小さいのですが、始動途中(加速途中)のトルクは大きくなります。
(参考書にこの様に書いてあった。丸写し。詳細は・・・聞くな! ワカラン。)
従って、回転数が上がると、必要とされるトルクが大きくなる負荷などに都合が良いと思います。
(短所)
起動トルクが小さい。
スターデルタと比較して、例えば始動電流が1/3になるようにリアクトルの容量を設定したとします。
この時のトルクは1/3では無く、1/9(=1/32)になります。
これは、電流値を下げると、同時に電動機に印加される電圧も同じ比率で下がりますのでこうなります。
スターデルタ起動とは決定的に違いますのでご注意下さい。
制御盤が大きくなる。
リアクトルは、機器の性格上余りコンパクトにはなりません。
従って、リアクトルを内蔵させた場合、制御盤が大きく重くなります。
コンドルファ始動
これも減電圧始動の一種です。
電圧を下げる手段として、補償器を使用します。
補償器とは、中間タップ付きのスター結線単巻きトランスの事です。下図参照。

上図は、始動時の回路を省略して記載したものです。
実際は、次ページに示すような回路を組みます。
(補償器 <==ナンジャコリャ!)
実際の回路図です。
訳が解らない結線に見えます。

「訳が解らない。」に追い打ちを掛けるようですが、動作は次のようになります。
始動順序は下記になります。
① MC2閉。引き続きMC1閉。MC3は開のまま。これで、補償器を経由した減電圧始動になります。
② MC1はそのまま閉。引き続きMC2開。MC3は開のまま。これで、補償器をリアクトルとして使用
した減電圧始動になります。
③ MC1はそのまま閉。MC3を閉。MC2は開のまま。
これでデルタ結線になります。
理解を得るために各動作を説明します。

上図は①の動作の結線図です。
補償器を単巻トランスとして使用しています。(補償器本来の使い方そのまま。)
電源電圧を線間200Vとすると、補償器巻き線のU~N間の電圧は115V(200/√3)になります。
u端子をU~Nの丁度真ん中に取ったとすると、u~N間の電圧は57.7Vになります。
従って、u~v間の電圧は200Vの丁度半分の100Vになります。(57.7×√3=100)
誘導電動機に印可される電圧はこの電圧になります。
つまり、線間電圧100Vで始動します。
②の動作の説明です。

上図は②の動作の結線図です。
補償器をリアクトルとして使用しています。
MC2を開放しますので、N点の結線が無くなります。
従って、補償器の巻き線を部分的に使用する事になります。
上図で、通電されない部分をピンクの波線で示しました。
下図と等価になります。

③の動作の説明は省略します。
直入れと同じ結線になります。つまり電源の直送です。
スターデルタ始動 その3(おまけ)
オープンスターデルタ始動の変形です。
下図参照。

図を見ると解りますが、これは図2のマグネットスイッチMC1を撤去したものです。
始動順序は下記になります。
MC3閉。MC2は開。これで、スター始動になります。
MC3を開。MC2は開。この状態は空転になります。
MC2を閉。MC3は開。これでデルタ結線になります。
(長所)
図2と比較して、マグネットスイッチを1個省略出来るので、正直コストダウンになる。
盤がマグネットスイッチ1個分コンパクトになる。
(短所)
常時電動機に電圧が印可されるので、電動機の絶縁が脅かされ、絶縁破壊を生じ、焼損することがある。
警告
原則としてこの方式は使用禁止です。
小生も嘗て、この方式でポンプ一式を焼損したことが有ります。
国土交通省の標準仕様でもこの方式は認められていません。
20年ほど前では、この方式が一般的でしたが、焼損事故が後を絶たず、原則使用禁止になりました。
使用する場合は、常時人が監視できる場合等に限られます。
くれぐれもご注意下さい。
スターデルタ起動の話 追補版
皆様こんにちは
今回は誘導電動機のスターデルタ起動の話です。以前に【誘導電動機の始動法】でスターデルタ始動をご紹介しましたが、実務と合わない部分が出てきましたので少し説明を加筆します。
早速ですが、下図を見て下さい。図を二つ用意しました。


さて1ページに記載した図1と図2では制御盤~電動機間の配線は同じですが、電動機~制御盤間の配線が異なります。
図2では△結線時に何やら逆転しそうですが、これで正回転になります。
何でこうなるのかの説明です。
説明に当たり、電動機の巻線を下記のように表現します。


図6の結線は図2の結線図に対応したものです。

訳が解りませんから図7の様に書き換えます。

何やら怪しげな図になります。
右側の図は図5を時計回りに120度回したものです。全体を回していますからこの図は図5と同じものと考えて問題有りません。
この図と図7を比較すると解りますが、電源の位置関係は変わりませんが、極性が3組とも180度変わっています。この様な場合、図7の回転磁界の回転方向と、図5の回転方向は同じです。
面倒ですが、次ページにこの証明をします。
煩雑な説明が続きますので、面倒な方は10ページまで読み飛ばして下さい。
解析に当たり、図の描き方を少し変えます。
図を横断していた電線は省略し、断面図のみを記載します。
電線の断面に「×」が付いているものは、この瞬間に電流がこちら側から向こう側に流れていることを示します。「・」が付いているのはこの反対です。
下図はこの時に流れている電流が最大値の時を描いたものです。
電源は交流ですから流れる電流は変化しますが、図7はR相の電流値が最大になる瞬間を描いています。

この様な描き方で、三相分の電流及び磁束軸を描いてみましょう。
描き方及び解析方法は「回転磁界の話」の場合と同じです。
下記の t1~t7 のタイミングで解析します。

作図に当たっての凡例は下記とします。

t1 のタイミングから行きます。図5の場合です。

図9~図11は各相の電流に依る磁束軸を単独に描いたもです。
これを単純に重ね合わせると、図12になります。
これをベクトル合成すると下図になります。
ベクトル合成の仕方は「回転磁界の話」の場合と同じです。

次に t2 のタイミングを描きます。

前ページと同様の解析を行うと下図になります。

同様に t1~t7 のタイミングを描くと下記になります。
電流の記載は省略します。

上記のように、1サイクルで時計方向に1回転する回転磁界が出来ることが解ります。
図7の場合を次ページ以降に示します。
今度は図7の場合です。t1 のタイミングから行きます。

図21~図23は各相の電流に依る磁束軸を単独に描いたもです。
これを単純に重ね合わせると、図24になります。
これをベクトル合成すると下図になります。

次に t2 のタイミングを描きます。

前ページと同様の解析を行うと下図になります。

同様に t1~t7 のタイミングを描くと下記になります。
電流の記載は省略します。

図5の場合を再度下記に記載します。
60 度のずれは有りますが、回転磁界の方向は変わっていない事が解ります。

この様に図1の場合と図2の場合は△に接続した場合での回転磁界の方向は変わりません。つまり両方とも回転方向は同じです。
では何故、図1の結線は行われずに図2の結線にするのでしょうか?
下記にJEC37には記載があります。(PDF版参照)
正直申し上げて良く解らない記載です。
この記載中で「開路期間中に回転子に滑りがあると・・・」とは下記のように解釈すれば良いと思っています。「開路期間中」とはY結線から△結線に切り替える途中で、Yマグネットと△マグネットの両方が開いている場合を言います。(だから、オープントランディションと言う。(らしい?))
「滑りがあると・・・」とは不思議な言い回しです。
元々誘導電動機は回転子が滑りを伴って回転していますから滑りがあるのは当たり前で、滑りが無かったらトルクが出ません。
今回の場合は「回路がオープン状態の時に回転子が減速し滑りが増加した場合」と読めば良いような気がしています。